仕事仲間が亡くなった。
入院するでもなく、倒れてあっという間に亡くなったという。
どういう関係だったかと簡単に言えば、俺が元請、相手が下請という感じ。
うちで作った製品を、現地で取り付けてテストまでしてくれる担当が彼だった。
あまり評判のいい人ではなかったかもしれない。いろんな人から良くない話を聞いた。
ただ、金に汚いとか仕事をサボるとかそういう話ではなく、ただ「仕事があまり出来ない」という感じなので、俺はあんまり気にしていなかった。
仕事出来る出来ないは、大袈裟に言ってしまえば些細な問題というか、個人の感想の部分が大きいのがこの業界だった。
俺としては細かい部分はこちらでフォローするので、面倒な仕事でもキッチリ収めてくれるかどうかの方が重要だった。
俺の考えるその人の良かった所は、情報を細かくこちらに上げてくれる事と、仕事先で人間関係を作るのが上手だった事。
どんなに難しいクライアント相手でも、その人は親しく接する事が出来てたし、うまく問題を解決してくれていた。
物凄く怖いと噂されるクライアントのお偉いさんが、その人にボソッと弱音を吐いていて、これは真似できないな、と思った。
ただ、その分心労が溜まっていたのかな、と思わんでもなかった。
誰とでも親しくなれるというのは、悪く言えば八方美人という事。
ある日その人が、クライアントのワガママをそのまま受け入れてしまうような事があった。
タダで出来るというか、ちょっと手間がかかる程度ならまだよかったが、大きな金額のマイナスが出るような話だったので、
その判断が間違っていたとは言わないが、もっと上手い言い方があったのではないか、と後になって思った。
それ以来、仕事で一緒になる事がなくなってしまい、その時の事について話す機会がなかった。
その人の事だから、物凄く落ち込み、また悩んでただろうと思う。
一度だけ年末に会って話す事が出来た。前と変わらぬ明るさで話かけてくれた。
多分、色々思うところはあっただろうが、それでも俺にはそういう部分を見せずに接してくれた。
物凄く嬉しかった。
次また仕事が頼む事があれば、俺ももっと上手くやろうと思った。
本当は来月一緒に仕事ができる筈だった。
隣県まで行かなければならない仕事だったので、久々に一緒にお酒を飲もうと思ってた。
それが出来なくなった。
ずっと出来なくなった。
もう二度と一緒に話をしたり、悩みを話し合ったり、バカな事で笑い合う事も出来なくなった。
なぜあの時、きつく当たってしまったのか、今すごく悔やんでる。
俺はあの人の事がすごく好きだったのに、みんなの「あいつは仕事が出来ない」という評価を無意識のうちに自分の物としてしまっていて、
あの人をどこかでバカにしていたんじゃないかと、今そう思っている。
そういう声をあの人が気付かなかったとは思えない。ずっと思い悩んでいたんじゃないかと、そう考えるとなんとも言えない気分になる。