人の嗅覚は強い臭いに慣れるという性質が大きいのではないかと思います。
「嗅覚疲労」や「嗅覚 慣れ」でググるとたくさんの解説が出てきます。
私は元喫煙者で、禁煙して15年が経ちその前に15年間吸っていましたが、
禁煙して3年ほど経過して、とても驚いたのがタバコの臭いの強さと、
タバコの臭いがこれほど強烈だと知らなかった、違和感をまったく感じなかったことでした。
嗅覚の疲労については、どこかで見た「嗅覚は大気中の異物を検知するための機能なので、日常的に強い臭いにさらされているとそれを異物として検知しなくなる」という説明を見て、なるほどなと思いました。
さて、元喫煙者の経験から、喫煙者と非喫煙者の間にある最も大きな乖離が、この「タバコの臭いの強烈さ」だと思います。
喫煙者とて普通に臭いを感じていますし、タバコの臭いも分かります。
しかし、この「普通に」と思っているところがまさに認識が乖離しているところで、喫煙者が思うタバコの臭いが「非喫煙者が感じる臭いの数十分の1」ということが分からないのです。
喫煙者にとっては自分の感覚が普通なので、「タバコが臭い」と言われても、臭いに敏感な人なんだな、という認識になります。
また、喫煙者が鈍くなっているのは「タバコの臭い」だけなので、他の嗅覚はすべて正常です。むしろ嗅覚に鋭い人もいるので「臭いに鈍感になっている」という事実は受け入れられ難くなります。
喫煙していた頃、ときどき「そんなにタバコいっぱい吸ってると、料理の味とか分からないんじゃない?」と聞かれることがありました。
当時はそんなわけないだろうと思っていましたが、今では相手が言いたかったことはよくわかります。
「こんなに強烈な臭いが分からないほど嗅覚が鈍ってるのに、料理の味が分かるの?」と言っていたのでしょう。
繰り返しますが、喫煙者が鈍いのは「タバコの臭い」だけなのです。
髪や部屋についた臭い、風向きによっては10m先まで届く臭い、歩きタバコの後ろにずっと残される臭い、タバコを吸った直後の体臭などは、喫煙者にとっては気づけないほどの軽微な臭いです。
さて、前置きが長くなりましたが、昔の人はタバコの臭いに苦情を言わなかったのかという話ですが、
前述した通り、人の嗅覚には「日常的にさらされる強い臭いに鈍くなる」という性質があります。
非喫煙者であっても、周囲に喫煙者・喫煙状況が多いほど、タバコの臭いには鈍くなっていきます。
「自分はタバコを吸わないが、食事の場でタバコを吸っている人がいても気にならない」という人は、日常的に喫煙状況の中にいることがほとんどです。
30年ほど前は、トイレ、電車、職員室にいたるまで、喫煙状況が当たり前にあり、
誰も彼もタバコの臭いに鈍くなっていたので、タバコが少々臭く感じても、目くじらを立てて怒るほどのことではなかったのではないでしょうか。
「ヒカルの碁」でも、碁会所の大人たちが子どもたちの前でばんばんタバコを吸っていて、子どもたちも「タバコの臭いは苦手だけど」と言っている描写がありましたが問題視はされず、当たり前の状況として認識されていました。
ここ25年の間に、急激にタバコを吸える状況は消えていきました。
周囲にタバコ臭が無いことが当たり前になり、タバコ臭に鈍い人が減り、タバコ臭を異常として認識する人が増えていき、そして今があります。
昔は社会全体に喫煙者が多いので喫煙行為が美化されがちでしたし、そもそも喫煙者にとってタバコの臭いが「悪臭」ではない、ということも要素としてありますが。
嗅覚が麻痺するからこそ不味いものを抵抗なく食べることが出来るのだよ タバコと味の素があればなんでも美味しくいただける
ブコメやトラバの加齢臭がすごいな。みんな何歳なんだ。
今年で30だよ!