コロナが流行してからは実家に一度も戻っていない。GWもお盆も年末もずっと。
正しい行動をしたと思っている。けれど、祖父母はかなり寂しがっていたと聞いていた。
いつ別れが来るかわからない、そう思って2,3年前は祖父母にいっぱい甘えて過ごしたのを思い出す。
コロナの前の年、祖父母を思い切り抱きしめて宙に浮かせた。祖父母が泣いていて笑ったことを今でも思い出す。
祖母の卵焼きは絶品で、いるものはないかと問われると卵焼きが一番食べたいと答えていた。
今年もお盆、年末と帰ることはできないだろう、と話した。感染者数100人を切るまでは帰らないと決めていたから。
全員ワクチンの二回目の摂取まで終わる可能性は高い。それでも感染リスクが下がるわけでもなく、重症になる可能性もある。
引き続き我慢すべきだと判断した。それを早めに伝えて、いらぬ期待をせず世間の感染者数を気にしないように過ごそうと。
すると、母から現在の状況を打ち明けられた。祖父母はもう認知症が進み、会えないだろうと。
運がよく入院などが進んだようだ。父も母の苦労を知っていて、納得の上でのことだった。
母は真面目で明るく、社交的でいい人付き合いができているからこそ、今回ことが進んだらしい。
なんてことないように振る舞っていたけど、荷が降りた安堵と若干の罪悪感を話しの端々に感じた。
母は自分にいらぬ心配をかけたくなかったようで、苦労話は全然しなかった。
けれど、エピソードを聞いてみるととんでもない苦労が隠れていたことがわかる。
今は夫婦で買い物にゆっくりいけることが嬉しいと聞いた。声音が優しかったのが、少し涙腺にきた。
母も少し鼻をすすっていたように思う。母よ、お疲れさまでした。任せっぱなしで本当にすいませんでした。
祖父母に会えないのは残念だ。
もう自分がむやみになにかしようとするのは、もはや部外者の面倒な要求にしかならないだろう。
求められば必ず向かう。そうでないのなら、自分にやれることが終わっているということなら。
あとは受け入れていくしかない。やれることはきっと2,3年前に実質終わっていたのだろう。
コロナの流行の中でも帰省すればよかったのか、いやそうは思わない。正しい行動をした。
自分が帰省中に感染し、感染させる最悪のケースもありえたのだ。誰も苦しんでいないし、医療関係者に迷惑をかけていない。
一人ひとりが耐えること、耐えてきたことが爆発的な流行を防いでいるのだ。
こういったケースは間違いなく自分たちだけじゃない。
間違っていない。ただ少し感傷的な気持ちになる。ありえたかもしれないことを考えてしまうが、仕方がない。
しばらく静かに過ごして、受け入れていこうと思う。
似た境遇。自分の場合は母親なので父による老老介護だった。