2020-09-28

【この日記フィクションです。登場する人物事象名称等は全て架空であり、実在のものとは一切関係ありません。】




6年間、探し続けていた女の子がいました。

勝ち気で、自信に溢れ、最強を自称し、経験に足り、緊張を度胸と努力で飼いならし、誰より自分真剣な――

女の子みたいな、女の子でした。

良く言えば、その子の見ている景色が見たくて。

悪く言えば、その眩しい背中から目を逸したくて。

探し続けていた女の子でした。


夏の終わりに出会って、冬。

春。夏。冬。春。秋。春。秋。春。秋。夏。

それからまた1年経って、今、夏が終わります

長いのか短いのか、判断がつかなくなる程度の時を過ごして、

初めて振り返ってくれた彼女は、

想像とは少しだけ違う形姿をしていました。

その日から、寝る時以外はずっと彼女を見て、彼女言葉を聞いていました。

仕事をしている合間、お風呂に入っている間、食事をしている間、家事全般日常可能な全ての時間で。

その全ては何一つ無駄ではありませんでした、が、実を結ぶことはありませんでした。

眉間から9cm。そこにいる、少しだけ形姿の違う彼女は、何日も楽しそうにこちらへ不敵に笑っていました。


週末、友人と共に晩酌を楽しみ、少しだけその事から心を離しました。

家に帰った後、眠る気にもなれず、出会ってから彼女に貰った言葉を1つ1つ確かめます

夏が去り、日が沈むのは早いもので、結局丸1日経ち、静かに目を瞑りました。

2時間以上の睡眠を取ったのは何日ぶりでしたか

から差し込む日差しと、早足にやってくる冬の寒さに起こされた今朝。

彼女の声は聞こえなくなっていました。





これは嘘です。

彼女は何日も前からずっとそこからしかけているのですから

ただ少しばかり、聞こえてくる距離が変わりました。

折り合いの付け方としては上等ではないのかもしれません。

しかしこれでいいのだと信じます

忘れない。でも思い出さない。

掛け持ちは不利じゃない。取り巻く全ては輝く糧に。

その言葉を、改めて噛み締めました。

これからまた彼女の「新しい」を探そうと思います






そうしてまた1つの季節を迎え、

どうしても食べられず、冷凍していたカレーを、やっと火に掛けました。





(了)

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