それを「実力があるがゆえに他人に言動を揺るがされないカッコイイ大人」だと勘違いしていた。
自分がなりたいと目指していたモデルタイプがそもそもクソ野郎だったことに気づいてしまった。
私はそんな人間になんてなりたくなかった。
技術力を身に着けたかったのは自分を安売りせず正統に取引を行えるだけの力を身につけるためであって、自分が他人をぞんざいに扱う側に回るためじゃない。
必要不可欠たる存在を目指したのは不当な圧力をかけようという気を削ぐためであって、自分が誰かに対してマウントを取るではない。
ヒーロー番組に憧れた子供が「正義を理由に暴力を奮って自分の正当性をこれでもかと主張できる存在」を目指してしまうのと同じ心理だろう。
虐げられることがない力を手に入れて目指していたのは平穏に暮らせる社会の構成者の一員となることだ。
自分が今までやられた分誰かに理由をつけて心身を痛めつけて溜飲を下げることじゃなかったはずだ。
間違えていた。
この歳になりようやく気づいた。
力があって高値で自分を売れるから、他人を買えるほどの金があるから、そんなことを理由にして横柄な態度を取っているやつなんてなにも格好良くない。
俺は強いから俺がやっていることは正しいと喚き散らす猿山の大将なんて目指してどうする。
そんなものを良しとするのは欲求の段階が原始的本能のレベルで止まっている蛮族だけだ。
ようやくそのことに気づいた。
技術力、経験、人脈、そういったものを身に着けて次にやることが、他人に対してマウントを取ることだなんて人間として情けないにもほどがある。
なんで俺は、そんなものに憧れていたんだろう……
うんこ
インターネットでやたらとイキってて噛み付いてばかりの技術屋とかまさにコレだけど、正論でズバっとやってニワカを切り捨てているのを見てカッコイイと勘違いしちゃうのは分かる...