2019-10-16

武蔵小杉からあなたへ

武蔵小杉被災地だ。他の地域と比べてうちの方が被害があったとか、被災地なのだから優しくしろとか、そういうことを主張したいのではなく、ただ、ここにも爪痕は残っているのだと知ってほしい。

まだかさぶたになる気配のない、真新しい傷は街のそこかしこに残っている。

私は武蔵小杉で生まれ、二十何年の時をここで過ごしてきた。

成長するにつれ武蔵小杉に対する世間評価が変わっていくのは分かったが、私はこの街自体が変わってしまったと思ったことはなかった。たまに「この街は変わったね」と言われても「ああ、そうなんだ」と思う程度で、正直あまりぴんときていなかった。

タワーマンション商業施設が増えて駅前景色が変わっても、通っていた小学校が建て直しにより当時の面影がない姿になっても、さみしさはあっても違和感なく受け入れることができた。

それらは失われたと思うより前に新しい便利さをもたらしてくれたし、何より昔からの街並みを無理やりに消し去ってしまうような乱暴ものではなかったからだ。

 

だけど今回の台風19号は違った。暴力のものだった。街を歩くと、変わってしまったとはっきりと思う。

幸いにも私の居住区で死者が出たという話は聞いていないけれど、だからといって笑い話にできる状況ではまったくない。

白いほこりと泥にまみれた道の上に、まだ新しい家具ゴミとして家の前に出されている。あれだけ慣れ親しんだ多摩川は見たことのない色に塗り替えられていた。どう見たって自力解決できる範囲を超えている。

台風上陸した当日のことも記憶に新しい。次々に深刻な状況が送られてくる緊急速報の音に怯えた。救急車サイレン明け方まで鳴り響き、少し外を見れば救急隊員の方がボートで街を見て回っていた。

あの夜、あと1m多摩川の水位が上がっていたら私は二階の窓から助けを求めていたかもしれない。

その恐怖心が昨日のことのように思い出せるからこそ、あの夜から現在も住人の救出、安否の確認、各設備の復旧作業にあたってくれている方々に感謝を示したい。


そして、その恐怖心を笑うあなたにお願いがある。

武蔵小杉馬鹿にするあなたこの街の住人になることはないだろう。

応援してほしいわけじゃない。見守ってほしいとも思わない。

ただ何も言わないでほしい。早く忘れてほしい。

一生他人なのだから放っておいてほしい。

あなたが笑うたび、私の故郷の傷は、より深くなっていくのだから

  • でも地方のKKOは関東人の生活に一生関わりを持ってほしくないんですよねわかります

  • ちびまる子ちゃん 小杉くんがウザすぎて視聴者ドン引き NAVER まとめ https://matome.naver.jp/odai/2142218068541915501 ごめん、どうしてもこっちの方想像しちゃう。

  • 武蔵小杉って1995年頃までは、まだ駅周辺がしょぼかったからのどかな雰囲気が残ってたような気がする。そして慶応の学生が多いイメージ。

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