2019-07-16

オレは慟哭をする

オレは九州で生まれた.兄貴は4歳だった.

物心つくころから夫婦喧嘩が常だった.

俺の一番古い記憶は,キチガイのような金切り声をあげる母親とそれを頑なに無視する父親

深夜に嗚咽する母親の傍で泣いていたことだ.

そんなオレを父親は捨てた.ある日から,帰ってこなくなった.オレが7歳,兄が11歳のころ.

オレたちは母親実家四国に帰った.

実家に移ってからは,毎日のように兄と母親喧嘩をしていた.

母親を宥めるのがオレの役目だった.なぜここまで喧嘩するのか分からなかった.

オレは何も知らなかった.どちらかの親についていかなきゃいけない.幼いオレは母親を選んだ.

オレは兄貴世界で一番,愛していた.

マンガインターネットも大好きなゲームも,兄貴が何でも知っていた.

頭もよくて,顔も整っていた.自慢の兄貴だった.

兄貴高校に入るころ,オレと喋らなくなった.オレは遊んでほしかった.

兄貴の部屋の前でウロウロしてリビングに戻ることが多かった.

兄貴は頭がよかったが,勉強をしなかった.それでも小中高大と私立上品学校に通った.

大学に進学し,兄貴は遠いところに行った.それから7年ほど,珍しく実家に戻ってきた1,2回を除いて,兄貴とは,会わなかった.

高校生のころから,オレは友達ができなかった.オレは喋り方がわからなかった.

イケてるものがわからなかった.俺は少なくともイケてなかった.

オレは一人になった.オレには何もなかった.

オレは努力した.国語以外の勉強はできた.大学にも入れた.

何もないからオレはがんばった.就職できた.

大学4回生の時に,偶然,兄貴と話す機会があった.それからネット通話でたまに話をするようになった.

ゲームの話,漫画の話,インターネットの話,父親の話.

多分,兄貴父親を選んだ.

俺は喋るのも書くのも苦手だ.自分気持ちをはっきりと口にすることもできない.

なぜなら,何が嫌で何が好きなのか,良く分からいからだ.

俺はもう23歳だ.会社人間関係は上手くいかない.俺はイケてない.

悔しいし,悲しいし,どうしようもないモヤモヤっとした諦念があたりを包む.

死ぬ前に恋をしたい.喋りたい.話したい.どれだけ辛かったのかを誰かに聞いてもらいたい.

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