愚痴。
週末に遭遇してうちにためてたんだけど、ここでこっそりぶちまける。固有名詞は一応ごまかす。
ちょっと用事があって関西神戸のわりとおしゃれなホテルに行くことになり、チェックインし、部屋に行くためのエレベーターに乗った。
大きめのホテルだけあってエレベーターも結構大きい。11人乗りとか? そのクラス。
ドアを閉めようとすると、バカンス風のファッションの男女が、大きなスーツケースキャリーを引きながら接近してきた。エレベーターに乗るようなので、場所を譲る意味を込めて俺はエレベーターの奥に移動した。
その二人組の男性がエレベーターに乗り込み、中程で振り返る。女性の方はキャリーを引いてるのかもたもたしている。
俺はエレベーターの開くボタンを押したほうがいいのでは? と思いながらもボケッとしていた。奥側に行ったのでボタンに手が届く位置ではなかったし、この時点で二人には全く興味も感情もなかったからだ。
女性が乗り込む段階になってちょうどドアが締まり、女性が挟まれてしまった。
この時点でもおいおい、くらいにしか思ってなかった。ご存知のようにエレベーターのドアなんて挟まれても潰されるようなものじゃないし、むしろ感知してもう一度開く。だから別に大事件なんて話じゃない。ただ、お前らカップルなんだから開くボタンを押してやるなり女性が乗り込むの待ってやるなり、どうとでもやり方はあるだろう。そう思った。
そうしたら、その女性が鼻にかかった声で
「きゃふふぅーん。としくぅん、ドアに挟まれちゃったよぉ」と言ったのだ。
なんかもう、人生で初めて聞いたような、芝居がかった花畑声だった。
としくん(仮)と呼ばれた男性はなんだか勝ち誇った声で「どんくせぇやつだな」と囁いた。
もちろんここに至ってもドアの開くボタンは押してない。
ドアは開き、女性はなんだか甘ったるい含み笑い声をうかべ変な動きをしていた。
そして再びドアが締まり始め「ひゃぁぁ。としくぅん。二回もはさまれちゃったよぅ?」と上目遣いで言うのだった。
としくんはニヒルな声で「荷物……よこせよ」と手を差し出して女性のキャリーバッグを受け取った。
「としくぅんやさしぃ……」女性はとしくんを見つめたまま三回目のドアに挟まれた。
俺はエレベーターの奥で息を殺して色即是空について考えていた。ドアを開くボタン押せよ、と思いながら。だって仕方ないじゃん? 増田たちなら何かできる? この状況で。
こんな状況で小芝居を見せられるようなどんな前世の業が俺にあるというんだろう? しらす丼を食ったせいで無数の小魚の怨念をこの身に受けてしまったということなのか? ないでしょ。ありえないでしょ。
俺にはなかった。なんにもなかった。だから九階で二人が降りるまで一言も口をきかなかった。
これが週明けて増田たちにどうしても聞いてほしかった一部始終だ。誰かに言っても仕方ないが、こんなこと内に抱えていたくない。あーもう。なんなんだよ。この世界って。俺が何か罰当りなことしたのか。なんかもう!なんかもう!
めちゃくちゃかわいいし面白いじゃんとしくんの彼女
エレベーターや エスカレーターは 危険な乗り物だと 認識して 必要十分に 注意して 乗りこまなければならない 腕 足や 首が とれてしまう事故が 海外で特に多い ...
9階では女の母親らしき人物が待っていて、「としくぅん」と甘ったるい声を出した。 なんと、「しらす丼」ではなくて「親子丼」だったのか、と俺はつぶやいた。
ねこ🐈きゃふぅ~ん💖
なんだろう、言葉にするのが難しいが、文学性がとても高いように感じる。 文学性とは何なのか? 測れるものなのか? 不明だけど。
あーよかった 最終的に男に絡まれるのかと思った 怖い話じゃなくてよかった