本当のことがとても嫌いで、それを他人に知られることに寒気がする。
とはいえ、なんでもかんでもうそってわけじゃない。さすがに学歴や経歴を詐称することはしない。
知られたくないと思うのは、私の過去に関わることだ。私の過去について話すと、人は不愉快になる。
それを就活のとき知った。過去というのはつまり生い立ちだとか、家族構成だとか。
と、そのときの私は思った。根は正直者なのかもしれない、バカがつくタイプの。
だから本当のことを話した。
そうしたら、ものすごく謝られた。悪いこと聞いたね、つらいこと思い出させちゃったねと(後日祈られた)。
私は生まれてからずっと虐待を受けていた。16のときに親が死んだので16年間、結構ヘビーなやつを。
一番すごかったのは、まあ、あれです。漫画とか映画とかでよく見るあれ(さすがにそれに関しては話さなかった)。
それに関して、別に悲しいとは思わない。不健康だとは思うけど、不幸だとは思わない。ただの過去だなと思う。
なんていうか、どうでもいいんだよね。
だけど、その話題になったら私はうそをつく必要があるんだな、と学んだ。
私の過去は「悪いこと」であり「思い出しちゃいけないこと」であり、
私という人間がどうやって生きてきたかは、ひとに話しちゃいけないことだ。
それ以来、私はうそつきだ。昨日の晩御飯ですら言いたくないときもある。
でもやっぱり、本当の私を知ってほしいときもあった。
BUMP OF CHICKENの楽曲に「ベル」という歌がある。
僕のことなんか何も知らない君から電話がかかってきて、元気? と
聞かれただけで泣いてしまう、という話。
「僕」は、話したいことがたくさんある。
「僕」は、いつも本音を言えない。
「僕」は、自分を忘れないでほしいと思っている。
「僕」は、ささいなやさしさに涙する。
私はこの歌がとても好きだ。まるで私のことみたいだと思った。
そんなふうにイジけていても、
本当は話したいことがいっぱいあって、ホントのことを話したくて、
みんなが大好きだからみんなを知りたくて私を知ってほしくて、
いつもいつもいつも、溢れそうになる。
長々と書いたけど、以上のことは全部うそです。
なにもないよ。話したいことも大事な物も。
男
🐈ねこ全部読んだよ。 うそでもいいので、またはなしてね。
息をするようにうそをつく、ではありません 息をはくように嘘をつく、です それぞれの動詞が同じ『吐く』で表記できるところがポイントなんですよ