2018-03-11

フライデーナイトファンタジー

ざっと25年から30年ばかり前の話だ。

小学生の俺は東北地方都市で、家族4人の次男として暮らしていた。

家は特に貧しいわけではなく、無駄遣いはできないにせよ不自由なく暮らせるレベルだった。

当時ファミコン大人気だったがうちにはなく、

テレビは小さいカラーテレビが一台だった。

そこそこ厳しめの家で、テレビを好きに見せてはくれなった。

一週間に一度、ドラえもんだけ観ても良い事になっていて、いつも兄と見ていた。

ときおり、金曜ロードショー面白そうな映画があると、見ても良い事になって父母も入れて4人で見た。

金曜ロードショーが終わるのは夜11時で、その時間まで起きていると夜更かしなので、

金曜ロードショーが始まる前に夜ご飯と歯磨きと風呂を済ませて、パジャマで見る事になっていた。

見終わったらすぐ寝るためだ。

特に冬は東北寒いので、ストーブをつけた部屋で、毛布をかぶって見る事もあった。

金曜ロードショーは開始時にフライデーナイトファンタジーという曲が流れる

それが始まったら、「はじまったよー」と呼ばわると、家族が集まって来て皆で見始めた。

解説水野晴郎淀川長治だった。

CMになると、その隙にトイレに急いで行った。

廊下は暗くて寒かったが、急いで用を足して急いで戻り、また毛布にくるまった。

俺はそんな時間がすごく好きだった。幸せだった。

土曜日半ドンだが学校があり、クラスでは金曜ロードショーの話に花が咲いた。

いつしか時は流れて、今家族は別々に暮らしている。

有難い事に父母も兄も息災で、兄は所帯を持ち子供がいる。

たまに実家に帰る事はあるが、もう一緒に金曜ロードショーを見る事はない。

動画はいつでもどこででも見られるようになり、トイレに行きたければCM時間を気にする必要もない。

あの幸せだった時間は二度と帰ってくることはないが、その代わりに別の幸せ時間もある。

ただそれだけの話。

四半世紀前の中流家庭の子供が、何を楽しみにして、何を幸せとしていたのか、なんとなく書いておきたくなって書いた。

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