くぇぉぅぇぁぁ。ぼやける視界を押し広げると、月明かりでぼんやりと浮かび上がっている天井が見えた、夜らしい
左腕が疼く。見てみると、記憶にない無数の、正確に言うと17本の切り傷の上に固まった血がこびりついている。知覚が起動し始めるとこれまた記憶にない下腹部の違和感が出てくる。前と後ろも
時刻は1時17分。外が暗いから午前なのだろう。空腹が胃壁に針を刺し始めてきたのでコンビニに行くことにする。月明かりを頼りに空っぽのカップ麺と卵(卵?なぜここに卵があるのだ?)をどかし、(触感からおそらく)下着と(大きさからおそらく)ジーンズとなんかのTシャツを探り当てる。ちょっとしめってるけどまぁいいやと着、鏡を見ずに外へ出る
神僕と大森靖子が鳴り終わり、女王蜂が流れ始めるとセブンについた。塩おにぎりと焼き鳥パック、セブンプレミアムの担々麺にいいちこをチョイス。空白に視線を落としながら佇む男の子はレジを打ち、寝起きの女は代金を渡す。帰り道は時雨にした
電気ポットから熱湯を担々麺に注ぎ、3分後に液体スープ、塩おにぎりと串から外した焼き鳥を入れてかき混ぜると完全食の完成。グラスに注いだいいちこと一緒に
死生観の話。死、つまり無はこれまで自分にとってすぐ隣、すぐ裏、すぐ前、いつでも簡単に手にとって眺めることのできる位置にあるものであり、死と生という二つの選択肢のうち、生の方を偶然、たまたま、思いがけず、強制的に、否応無く、止むを得ずやっているという感覚と過ごしてきた。実際にやったことはないのではっきりとはいえないが恐らくやろうと思えば人を殺すことのできるタイプの人間であるし。実際にやったことはないのではっきりとはいえないがこの世界から居てもいなくても特に問題のない人間のうちの一人である
とにもかくにも、今は死の方に行ってみたい気分なのだ。ひっくり返してみたい気分なのだ。すぐそこにあり匂いただよう死へ
いいちこを飲み干し、窓を開け、ベランダの鉄格子を、8階の鉄格子を、一切の躊躇なく、流れるように、前からそうと決まっていたかのように飛び越え
7階 6階 5階 3階 ほら簡単