ストロング・ゼロから5年。街の様子はすっかり変わっちまった。今立っているのは子供の頃にあいつらと遊んだ公園。そこすらも汚染されている。あの大爆発から、俺たちの生活に残っているもので以前と同じものはもう何もない。街だけでなく誰も彼も何かが変わっちまった。
それははじめ、化学工場かなんだかが爆発したと報じられ、街のみんなも最初はそう信じていた。しかしニュースの情報量が減るにつれて巷に流れる怪しげな噂の量は増えて言った。誰が言い始めたかは知らないが、いつしか俺たちはその出来事を「ストロング・ゼロ」と呼ぶようになっていた。ストロング・ゼロから5年。謎はまだまだ深まるばかりだ。
そんな時に出会ったのがコウスケだった。コウスケは同じ大学の同期。もう卒業の年で大概の奴らは就職が決まって浮かれているか、決まってなくて絶望してるかのどちらかだった。まあそれは普通の場合。俺とコウスケは何にも考えていなかった。ただ薄れゆく現実感の中で時間が過ぎるのをぼんやりと眺めているような生活をしていた。何も起こらない淡々とした日々が続く中で俺にとってさいわいだったのは、大学の売店で俺が釣り銭を落とした時、拾ったやつがコウスケだったってことだ。コウスケは開口一番こう言った。「おまえ、ストロング・ゼロを知ってるか」
普通だったら怪しい勧誘か何かの手先かな、で終わるだろうけどコウスケは妙に気になるやつでそれから話し込んでしまった。俺はストロング・ゼロのことは何一つ知らない。最初はそう言ってはぐらかしてやり過ごした。コウスケがどの程度のことを知ってるかってのも気になったし、探りを入れる意味合いもあった。コウスケは勝手にベラベラと喋り出した。どれも字が読めるようなまともなやつなら知れるようなことばかりだった。唯一気がかりだったのが、なぜこいつはそんなにもストロング・ゼロに思いいれがあって、それを俺に話しかけたのだろうというところだった。
それから俺とコウスケはちょいちょい遊ぶようになった。お互い何にも考えていない同士。現実に現実感を見出せない同士気があったのだろう。大学の講義に行くでもなく、ただ周辺や敷地内をうろついては適当なベンチで酒を片手にあることないこと話し込んだ。ストロング・ゼロのことは不思議なほど話題に上がらなかった。
その日の夜も俺とコウスケは酒を片手に語り合っていた。いつもと違かったことといえば、コウスケはいつもより積極的に酔っているように見えた。案の定、俺はコウスケを家まで送ることになった。家に送り届け、帰ろうとした時、コウスケは突然口を開いた。あまりにも切羽詰まった様子で言うもんだから、さすがに驚いてしまった。
知らないと言って帰ろうとしたけれどコウスケの力は強かった。肩が痛かった。なんだよ、知らないって言ってるだろ。どうしたんだよ。
「俺、お前があの場所にいたのを見たんだ。知ってるだろ、知ってるなら教えてくれ」コウスケの目は本気だった。
おおお!続きが気になる
https://anond.hatelabo.jp/20171208141640
そのとき、コウスケのiPhone7が鳴った。俺も一緒に買いについていったから覚えている。そのときはなぜだか頭の奥では一瞬冷静になってそんなことを考えていた。考えていたというか、...