2017-12-09

「おまえがストロングゼロを知らなくても、ストロングゼロ

そのとき、コウスケのiPhone7が鳴った。俺も一緒に買いについていったから覚えている。そのときはなぜだか頭の奥では一瞬冷静になってそんなことを考えていた。考えていたというか、自分をどこか観察していたというか。コウスケは画面を見るなり、電話に出ながら部屋の奥へと戻っていった。これは今でもふと思うけれど、俺はそこでそうすべきじゃなかったのかもしれない。けれども俺が選んだ行動は、コウスケの後ろ姿を眺めドアが閉まるのに任せたあと、自宅へ戻ることだった。その日以降コウスケから連絡がくることはなかった、俺もこちからとることはしなかった。気づいた頃にはもう遅かった。正確には、その日から俺はコウスケの姿すら見ていない。大家によると、あの日の翌日には空っぽになっていたそうだ。

***

イズミと会ったのは、高1になってすぐの頃だった。といっても最初はすれ違った程度だけど。初めて話したのは高2になってからだった。タクヤイズミが話してて、俺は偶然通りかかったついでにタクヤに話しかけた。もちろんイズミが気になってたからなんだけど。そしたらイズミが「ねえ、君、イトウくんでしょ」って言ってきた。イズミは初めから適当だった。俺の名前イトウじゃなかった。けれどもそのときは、俺もノリで「おう」と応えた。その日から俺はイトウくんと呼ばれるようになった。イズミが俺の本当の名前を本当は知ってたのか、知らなかったのかは今でも知らない。他称イトウの恋は8月の大爆発と一緒にどこか遠くへ行ってしまった。タクヤが泣いていたのを思い出す。思えばその頃から歯車は狂い始めていたんだろう。あのとき俺がイズミを誘わなければ。

https://anond.hatelabo.jp/20171208141640

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