私はただモテたいだけだった。
灰色の中学時代、イベントで売り子して友達とも遊ばずにオフ会を重ね、学校にもまともに行かずにTwitter見てpixivみて溜めてたアニメを消化して、それはそれで充実していた。学校に行かない私は嫌いだったけどオタクをしてる私は好きだった。
エスカレーター式に高校に入り、大学という単語がちらついてからというもの、勉強することを覚えた。中学時代をひきこもりで過ごしてきた私は特にオタクでなく、休みがちな子というのが周りの印象で、高校に入ってからはほぼ皆勤の“普通”になった。
私の学校にはオタクが多く、オタクに優しい環境でむしろリア充と呼ばれるキラキラ系がラブライブを試しにやってみたりするような学校だったが、オタクがバレるのが怖くて何も知らないフリをした。
そんな私に転機が訪れたのが、ある1人の男友達にオタクだと打ち明けた時だった。彼はゴテゴテのオタクで周りからいじられるタイプで彼の好きな人というのは一瞬で広まるような、そんな人だった。その彼の好きな人というのが、私だった。
勿論振った。全然好きじゃなかったから。しかし、友達だとおもってた人からの好意は、戸惑いと微かな優越感を私に与えた。
それから私は全ての優先順位をモテに置き、過ごしてきた。隠れオタクというのは、魅力的らしく、「実は私も…」と打ち明ければ一瞬で仲良くなれた。非オタクにはそれがバレなければ良いだけの話だった。
結論から言うと比較的私はモテたし仲良しの男友達も格段に増えた。
モテるのは簡単だった。恋しやすい女になればいいだけ。話しすぎるほど男好きでなく、全く話さない陰キャでもなく上品に笑い、適度に目立ち、太らず、髪の毛を巻く。ちょうどいい女に私はなった。
しかし手にいれたものは上辺だけのLINEとInstagramだけだ。
ちょうどいい女になっても、好きな人にだけは告白されなかった。好きな人の友達に告白されて結果的に失恋した。
前みたいに自分を好きになれなくなった。勉強を頑張るのも西野カナを聞くのも私が、私でないようなもので、心をからにして、行う。