今朝のこと。
本降りの雨の中、駅へと向かう道中での出来事だ。
細い道から駅へと続く一本道に出ると、目に飛び込んできたカップルに対して僕は猛烈な違和感を覚えた。
おたがい年は30前後だろうか。
どちらも小奇麗にスーツを着こみ、はたから見ればありふれた社会人のカップルである。
しかし、この本降りの雨の中にもかかわらず、二人は決して大きいとはいえない女性ものの傘の中に身を寄せ合うようにして歩いていたのだ。
傘は出来る限り女性に寄せられてはいたが、二人の外側の肩はどちらもびしょ濡れだった。
そこで疑問が生じた。
この雨は朝早くから降っていた。つまり玄関を出るときには降っていたはずだ。
猿同然の性欲を持つ学生同士であれば朝からイチャつくの不思議ではない。
しかし二人の落ち着いた格好を見る限り、そうは思えなかった。
夕方には雨が止む予報だったから男性が持っていくことを渋ったのだろうか。
それにしてもそれほどまでに肩が濡れることを女性に強要するとも女性が承諾するとも考えにくかった。
なぜ小綺麗なスーツの袖をびしょ濡れにしてまで、二人は小さな傘一つに身を寄せあわなくてはいけなかったのだろうか。
そんなことを疑問に考えながら歩いていると、ふとそのカップルが会話を始めた。
女性から男性に向けた言葉はタメ口であるにも関わらず、男性は終始、敬語で返答をしているのだ。
二人は家から駅に向かっていると考えるのが自然だが、その会話からみる関係性からは二人は同じ場所に住んでいる間柄ではないということになる。
それならば考えられる理由は一つ。
二人が出発した家は女性のみが住んでいる家だということになるだろう。
目の前の会話において未だに一方が敬語であるということは、二人は別々の場所に住む仕事上の関係であるにも関わらず、昨晩はわけあって一夜を女性の部屋で過ごすことになった。
また、たとえ女性物の傘がもう一本あったとしても、男性が一人でさすには抵抗があったのだろう。
コンビニで新しい傘を買っても夕方には荷物になってしまうことにも抵抗があったに違いない。
その結果、二人は一つの女性物の傘に二人で入るという選択に至ったことで、後ろを歩く僕にその理由を悟られるに至ったのだ。
きっと、男性は下着や靴下に至るまで昨日と同じものを着ているに違いない。
しかし、一つ解せないことがある。
一方が敬語を使う間柄であるにも関わらず、なぜそれほどまでに二人は寄り添って歩いているのだろうか。
外側の肩をそれ以上濡らさないようにとするには、内側の肩があまりにもくっついているのだ。
一体二人はどんな関係で、なぜ昨晩を女性の部屋でともにしなくてはならなかったのか。
女性の部屋では昨晩何が行われたのだろうか。果たしてスーツを脱ぎ捨てた後も上司部下の関係は崩れなかったのだろうか。それとも男性はスキルギャップ萌えトラップの餌食になってしまったのだろうか。
疑問はまだ尽きない。
???「上司部下というより兄妹という関係であることを疑うというかそういうことで納得をしておきたい」