最近、やたらとテンション高く「過払い金の時効が近い! 今すぐ返還手続きを!」と連呼するCMがラジオで流れている。
それを聞いて気づいたけれど、あんなに大好きだった父親と10年近く連絡を取ってない。
10年前、父のために弁護士を雇って、債務整理と過払い金請求をした。戻った過払い金は500万以上。
それでもすぐに「お金が足りないんだ…」と、申し訳なさそうな声で無心の電話がかかってくるようになった。
わかってる。
収入の全てを自分の遊興に使い切って、借金まみれの人生を過ごしてきたお父さんは、厚生年金の15万ぽっちじゃ暮らせない。
電話が来るたびに私は何万も振り込んでいた。
その頃の私は、結構なお給料をいただける楽しい仕事に運良く転職できて、欲しい服や行きたい旅行などの小さな欲を次々に満たしていた。
そうして、自分のやりたいことだけを考え続ける暮らしがつまらなく感じるようになってきていた。
誰か他の人のために働く年頃になったのかな、そんなことをぼんやり思ってると、毎週のように父親から無心の電話がかかってくる。
「なるほど、私の人生の余力はお父さんのために使うのか」と、諦めのような父親への情が身体に染み付いた頃に、ずっとずっと欲しかった赤ちゃんができた。
妊娠検査薬を使った喫茶店のトイレで、人生でこんなに泣いたことがないってくらいに泣いた。
あの涙で憑き物が落ちたみたいに、父親からの電話に出なくなって、もうすぐ10年。
お金のことでいつも滅茶苦茶だった家に育ったから、結婚なんて絶対にできないと思い込んでいたけれど、自然に結婚もすることになった。
私はいま、尊敬できる素晴らしい夫と2人の子どもたちを愛して暮らしている。
夢のようです。
夢じゃないかと思うから、夜中に目が覚めると怖くて目が開けられない。
それくらい夢のような毎日だよ、お父さん。
1人で暮らすお父さんが苦しい死に方をしないといいなあと毎朝、ラジオのCM聞くたびに思ってます。一人娘はきっと死に目にあいません。
私ばかり幸せでごめんなさい。
この我侭娘め
もう死んでるんじゃねーの?
そういう身内にできることは、その人を信じて見守ること。難しいけど。お父さんは依存症だったわけだから、精神内科に通うとかするしか、治る見込みはない。それを実行できるのは...