色んな所で非難轟々な電王戦第5局の記者会見だけど、俺はすごくいいと思ったよ。
現代の侍達が真剣勝負と武士の情けのせめぎあいで、ギスギス、ギスギスしちゃって、
ああきっと、日本の歴史の分岐点でも、似たようなギスギス感が漂ってたんだろうなぁって思った。
けど、その良さがいまいち伝わりきれてない。
だから口下手な巨瀬君に変わって、どんな会見だったらみんなにあの良さが伝わるのか、俺が勝手にifバージョンを作っちゃうよ!
司会「本日の対局ですが、21手までて先手番の阿久津八段の勝ちとなりました。
かなり早い段階での投了となったかと思いますが、AWAKE開発者の巨瀬さんに今回の対局のご感想をお願いします」
巨瀬「そうですね……
正直まだ気持ちの整理がついていない状況です。
(5秒ほどの間)
21手での投了というのは、早すぎるという意見もあるかとは思いますが、
あの時点でかなり大きな駒損で、あのまま指し続けても、もはや勝ちは望めないという状況で、
えー……そういう判断でした。
この手筋は、100万円チャレンジでアマチュアの方が指して、ハメられた形で、
もう知られたハメ手で……
(涙ぐむ)
(鼻をすする)
残念です。
っ、はー……
(上を見上げ、涙がこぼれないようにする)
プロ棋士への憧れは、どうなるのか……
ソフトから良い手を引き出して、自分の棋力を上げるのではなく、
ソフトの一番悪い面を引き出して勝ったとして、それが将棋の面白さに、何の貢献をするのか。
このような姿勢では、プロ棋士の存在理由を脅かしているのは、プロ棋士自身なのではないか……
(10秒ほどの間)
えー……以上です」
阿久津八段「阿久津です。
本局では、えー、ソフト特有の悪手を誘う、含みを持たせる形の駒組みをしたわけですが、
えー、そうならない変化も多く、勝利のために最善をつくすという意味で、
巨瀬「(司会の進行を無視して)
ま、負けない……だけでなく、
かっ……勝って欲しかっ……
うぐっ、うぐっ……
うわああああああーーー!!!
(野々村並みの号泣)」
阿久津八段「(涙ぐみながら)
そ、それでも、それでもプロは、勝たなきゃ……
プロなら……
いや……
負けとうない。
ワイは、絶対に負けとうないんや!
たとい、機械相手でも!
ワイが、ワイが負けとうなかったんや……
堪忍やで……ホンマ……うっ、くっ……」