2014-08-16

翼の折れたおじさん

昔はよく夏休みになると、姉と祖母と映画に行っていた。両親が共働きで忙しく、遊びに連れて行けない代わりにと祖母がいつもたくさん映画を見せてくれた。

ジブリ作品ハリウッド映画、人気アニメ…夢中になってスクリーンにかじりつくと、自分映画館椅子に座っていることも忘れて、映画の中に入り込んだような錯覚に何度も陥った。クレヨンしんちゃん映画の終盤(確か暗黒斎の野望だったと思う)で、クレヨンしんちゃん現実世界に戻れなさそうな時は、姉と祖母に両手を繋いでもらってしんちゃんを助けて!と泣きながら見たのを覚えている。

いつだって僕は映画が終わっても余韻が抜けなかった。スターウォーズをみた後はまだ宇宙船に乗ってるような気がしたし、タイタニックをみた後もまだ気持ちは豪華客船に乗ったままだった。映画をみた後は現実世界が逆に嘘みたいで、どうやったら気持ちが映画を見る前に戻れるのか真剣に悩んだくらいだ。

だけど、いつからか僕は現実世界から飛び立つ翼をなくしてしまった。どんなに面白い、よく出来た映画を見ても、映画館椅子にしっかりと座っている事実を一瞬たりとも忘れることがない。感動はもちろんする、ワクワクもハラハラもする、だけど心の底からはしていない。主人公が助からなくても、僕の生活になんら支障が出ないことを、知ってしまたからだ。

アナと雪の女王を見ても、小さな国と近所の山の数週間の話だな…と思ってしまったし、思い出のマーニーを見ても、遠くからそれを眺めているだけの自分がいた。

もう昔のように日常生活から気持ちを連れ去ってくれ、ワクワハラハラすることを映画に求めることは不可能なのだろうか。色んな経験を積んでしまった僕には、新しい世界は開けないのだろうか。あの未知なる感覚を追い求めて未だに映画館には足繁く通っているが、映画が終わり照明がつけばすぐ現実世界にすぐ馴染み、社会で働くマシーンへと変化する。そんな自分が悲しい。

演劇舞台はまだ見に行ったことがないから、見に行ってみようかな。どうしても非日常を味わいたいのである。疲れてるのかな。


★追記

たくさんのブコメありがとうございました。ものすごくためになるコメントばかりですごくありがたかったです。本当に勉強になりました。お盆の間中、姉の子供たちにおじさんおじさん呼ばれていたので若いといってもらえてうれしかったです。笑 今度はこの子たちやいつか訪れてほしいわが子にをいっぱいいろんな体験させてあげよう。

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