はずがないのだと。
ホットケーキが出てきた。ホイップが乗っかっていた。
盛り上がっていた。
業務用ホイップに吸い付く前に、出てきたホットコーヒーを
口に寄せた。
我慢した。
口に寄せた。
うぉゑ
もちろんミルクの香りなぞ植物油脂の固まりには全く感じられぬ。
舌触りは、最悪。
麻痺していた味覚が否応なしに再開し始める。
くそまずい。業務用ホイップの美味しくなさなど◯ストやミ◯ドで
何百回と経験しているから想定内の範囲内で収まると思ってた私は
愚かだ。
これは罰なのだ。パティシエさんたちがせっかく毎朝生クリームを立てているのに
植物油脂の固まりをクリームだと言い張って食している貧乏でさもしい日本社会全体の
罰が私の身に降りてきたのだ。
客の入りは半々。吐くわけには行かぬ。咄嗟にそう判断。
私は私の味覚が全力で拒否したブツを周囲への配慮から飲み込まざるをえなかった。
すぐさま座席を立つ。理由は何でもいい。
「ごめん、ちょっと用事」
終末を告げる天使がラッパを鳴らし、正直で善良な料理人は神のご意思で天国へ導かれ、
業務用ホイップにかかわる業者も小売店も、欺かれていることに薄々気が付きながら