「本当に大切なものは目には見えない。」
心の底からそう思った。
では何故いままで、普段の生活からこの一言が誰も口にしなかったんだろう。
思い返せば、学生生活の終わりのころ、大学を卒業する直前までいたボランティアサークルではその一言のような言葉がいつも聞けたかもしれない。いや、聞けたというより、誰が言わなくてもそれを感じる事が出来たというほうが正確かもしれない。
会社では聞けなかったな。
仕事がうまくいくか行かないか、仕事で下手をすることで自分の生活に不自由が生じるか、難しい仕事をすることで来る反動、つまりはストレスを少しでも取り除くために、仕事とは別の場所でなにか思いっきり楽しい事をしようという欲求、それくらいしか、関心が無かったのではないか。
しかも、会社と家庭は別のコミュニティであるが故の別の問題もある。
もっと沢山仕事をさせたいのに、家庭があるから任せられないと、会社は思っている事がある。
例えば、女の社員に子供が出来てしまった時や、社員の誰かが休みを取りたいと言ってきたときだ。
「本当に大切なものは目に見えない」
そうなんだろうと思うし、そう思う人は僕以外にも沢山いるはずだ。
でもなんでこの言葉を実際の生活、つまり自分の人生に活かすことが出来る人が少ないんだろう。
活かすことが出来ていない人の例は、この物語の前半、王子様が地球にたどりつく途中の星の人によって表現さ
れていた。
物語を通して客観的にみて、この人たちはおかしな人たちだなぁと思った。
人の心が通ってない、優しさを持ち合わせていない人たちだたぁと思った。
自分の周りにいる人や、自分自身と照らし合わせてみると楽しく読めた。
それと同時に、自分のいま抱えている問題も浮き彫りになった。
自分の抱えている問題は、何が問題なのかは分かっていたし、どうやって解決するか、どうやってその問題から遠ざかることができるかは知っていた。でも、その解決には時間がかかることも知っていた。
「おかしくなんてないよ。」
それと同時に、そのような言葉をかけてくれる人が自分の周りにはいないのではないか、と思ってしまった。
でも、よく考えてみたら、自分の横にいる人がいつも言ってくれていた事に、この本を読んだ後に気付いた。
「自分は分かってる」と思っていたけど、たぶん何も分かっていなかった、というか感じる事が出来ていなかったのだろう。
本当はいたんだ、大切なバラは僕のすぐそばにいるという事を。
大人になる事は大変なことだ。
弱音を吐く事も許されない、逃げる事も許されない、泣く事も、助けを求める事も許されない。
これって正しい事なんだっけ?
これが僕たちの描いていた正しい大人のありかたなんだっけ?
僕一人が考えてもたぶん何も変わらないだろう。
でも、僕の隣にいる人は違う。
そんな僕の苦悩を少しでも分かってくれる人であるはずだ。
それの事を忘れてはいけない。