呼ばれるまで待っていると、4歳くらいと2歳くらいの女の子とその母親が来た。
母親が受付を済ませると、女の子たちは病院に備え付けの本棚へ行き、待っている間に読む本を選んで、母親の元に行った。
母親が受け付けを済ませている間、女の子たちは母親の元から離れず、本を選んでいる間も姉は妹に「どの本読む?」と気を遣い、本を選んだあとは、静かに本を読んでいた。
が、まず入ってくるところからして違った。
母親が病院内のスリッパではき替えている最中に男の子は受付まで半ばダッシュで進んでしまい、「ヒロ(仮名)!」と名前を呼ばれたしなめられていた。
母親が受け付けを済ませている間も、男の子は本棚へ行き本を選び始めたが、母親が受け付けを済ませた後も本を選んでおり、「どれにするの!」とイラついた母親にせかされ、半ば強制的に「これがいいのね!」と決められた本を持ち、引っ張られるようにシートへ座った。
その後も男の子は絵本を静かに読むのではなく、奇声ではないものの「あっ」「うー」などの声をあげたり、絵本をバシバシと叩いたり、地面に本を置いたりし、そのたびに母親に「コラ!」「ヒロ!」と叱責されていた。
なんとも対照的な親子の姿を見て、男の子の親に同情してしまった。
障害があるとまでは言い切れないが、明らかに男の子は平均より発達が遅れているだろう。
落ち着きのなさという点では、先に来た2歳の女の子以下だ。
そもそも、自分が病院を出るまで男の子からまともな単語を聞かなかった。
2歳の女の子は母親を連れて本棚に再び来たとき「これ読む」と母親と会話していた。
こんな違いを見て、世間は、そして男の子の母親はどう思うだろうか?
「まったく、この男の子は躾がなっていない。親はどんな教育をしているのだ」と世間は明白に声に出す人は少数だろうが、視線や舌打ちといったノンバーバルコミュニケーションで、多くの人がメッセージを発しているだろう。もしくは私のようにネットや裏で陰口を叩いたり。
「私は子供の為に頑張っている。子供の為に食事や洗濯を行い、マナー違反は叱っている。なのになぜ誰も評価してくれないの!?なぜうちの子は他所の子と同じようにできないの!?」
そのイライラは男の子への、まるで動物を調教するかのうな、単調な叱責となって表れる。
男の子は「ダメ」という単調な叱責しか受けないため、なぜこれをしてはいけないかという説明がないため、なかなかルールを覚えない。それどころか、単調な叱責に対しては徐々に免疫が付き、ちょっとくらい「ダメ」と言われても行為を止めなくなるだろう。
そうすると母親が次に取る行動は?
より強い単調な叱責だ。エスカレートすれば暴力もあるかもしれない。
完全な悪循環だ。
どうすればこの不幸な連鎖を断ち切ることができるだろうか?