健康でバリバリ働くのが生き甲斐だった頃の夫は、いわゆる「守ってやりたい」派の男性だった。その庇護があまりに鬱陶しくて離婚し、仕事を続けながら出会った男性と公私共のパートナーとなった。一緒に仕事をすることが当たり前の毎日…2人になったことでパワーアップし、事業もうまくいっていた。
今思うと身勝手なことをしたと思う。でも元夫には悪いことをしたが、社会には貢献できたというのも事実だ。
…そんなある日、突然発症した。
膠原病の一種の難病で、一生薬を飲み続けなければならず、定期的に検査も必要。身体は不自由になり、今までのようには仕事ができなくなった。
山盛りの薬の副作用に苦しみ、疲れやすくなり、関節痛には薬も効かず、指先も言うことを効かない。
パートナーには迷惑をかけ、通院の世話にもなった。彼の母親は「入籍もしていないのだし、そんな人とは別れて帰ってきなさい」と、何度も電話してきた。それでも5年間一緒に居てくれた。
…というより、そんな状態の私にまだ仕事の話をしてくる。当人の私は体調管理で仕事どころではなく、アイデアも枯渇し陳腐なものしか吐き出せなくなっていた。
そして最近、やっと症状が落ち着いたというときに切り出された。
引っ越しなど生活が落ち着くまでは、協力する。でも、自分は母親の元に帰らなければならない。しがらみの多いその街に、あなたを連れて行くのはお互いしんどいと思う。
え?何それ? 入籍こそしていないけれど、事実婚同然だし、健康なときはあれだけ一生懸命2人で頑張ってきたじゃない。なのに、足でまとい? 私をまき巻き込みたくない?
は、っと気づいた。いつの間にか、自分が「守ってもらいたい」人になってしまっていたことに。こんな厄介な病気になるなんて、健康なときには考えもしなかったし、一緒に仕事ができる人こそが人生のパートナーだと思っていた。その自分の考えがこんなにもヤワになるなんて。
正直、今の体調で独り暮らしは心細い。指がだんだん動かなくなってきている。幸い、経済的にはまだ世話になっていない(貯金を食い潰している)けど、それは時間の問題だ。そうなったときに、この人は助けてくれない。
まだ元気な母親の元に行って親孝行をする、という責任を全うしようとしている。
周りに聞くと、この病気になって結婚をあきらめたり、断られたり、離婚した人は多い。自分はまだ5年も一緒に居てくれただけ幸せだったのかもしれない。
できることなら、彼に罪の意識や後悔を感じさせることなく、そっと去りたい。
女の癖に仕事に生きようとするから、バチが当たったんだな。