2018-03-16

[] #52-3「カカオ聖戦

≪ 前

広場にいたのは以前、弟たちが色々と野暮なことをして困らせた魔法少女の人だった。

どうやら、何らかの催しと合わせてチョコを配っているらしい。

「うっわあ、あんだけ無作為に配るって、俺には絶対マネできないな」

「まあ、人気商売からね。見返りってのは形のあるモノだけじゃないってことなんだろう」

配っているチョコはどうも魔法少女組合販売しているチョコらしく、在庫処分なのか宣伝目的なのか分からないが、いずれにしろ利己的な思惑が絡んでいることは明らかであった。

慈善団体という名目だが、魔法少女をやっていくのは簡単ではないということなのだろう。

「タダで貰えるんだったら、俺も貰ってこようっと」

ついでにこちらのチョコを捻じ込めば一石二鳥だ。

弟は列に並ぼうと魔法少女に近づくが、ミミセンが静止する。

「いや、僕たちはこれまでも魔法少女の人に図々しいことをしてきたし、今回はやめとこう」

弟は些か無神経なため、理屈イマイチからなかった。

それでもミミセンの判断が優れていることは分かっていたため、大人くそれに従った。

「まあ、いいや、とにかくチョコを捌かないと」

「渡すアテはあるのかい?」

「とりあえず近所の知り合い、きっちりお返ししてくれる律儀な大人たちに優先して配ろうと思う」

こうして弟は知り合いの大人たちへチョコを配りまくった。

予想外の人物からまさかバレンタインチョコにみんな最初の内は困惑するが、「こいつのことだからホワイトデーの見返り目的だな」とすぐに勘付く。

それでも受け取ってあげるあたり、良くも悪くも弟の人徳が成せる業である


その道中、また知っている人物を見た。

生活教』だとかいうのを広めている、時代遅れで薄味な新興宗教教祖だ。

「皆様、バレンタイン宗教関係していることをご存知でしょうか。しかし、贈答品がチョコというのは企業戦略の結果もたらされた風潮でしかありません。国によってはメッセージカード、花などを贈ることもあります

バレンタインを話に絡めて、今日も飽きずに布教活動をしているようだった。

みんな教祖のことを胡散臭い人物だとは思っているのだが、それでも話に聞き入ってしまう者が何人か出てくる。

曲がりなりにも教祖なんてやっているわけだから、やっぱりそういった“素養”があるのかもしれない。

恋人のための祭りという認識一般的かもしれませんが、これも厳密に決まっているわけではありません。片思い相手、友人、仕事仲間など様々です。つまりマクロ的な観点から見れば、チョコ以外のものを送ってもいいですし、誰に送っても問題ないのです」

いまの弟にとって、その教えは福音だった。

「こう、おっしゃる方もいるでしょう。『大事なのは真心』だと。ですが、それは目に見えませんよね。こう考えてみましょう。真心可視化したものが贈答品なのだと。そう考えるなら、大事なのは“何を贈るか”ですよね? そこで『生活教』では、生活用品を贈答品として推奨しております……」

しろ耳の痛いことも言っているのだが、こういうものは各々が都合よく解釈するように人間は出来ている。

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記事への反応 -
  • 「けど……ある意味チャンスなんじゃないかな」 「は?」 「俺たちがチョコを押し付けることもルール上ありなんでしょ?」 バレンタインは女性がチョコをあげているのがポピュラ...

    • バレンタインデーの発祥には諸説ある。 バレンタインとかいう司祭が恋人のために催しを行ったのが基とされているが、それは作り話だともいわれている。 いずれにしろ、真実があや...

  • ≪ 前 ところかわって兄の俺は、相変わらず家で世俗にまみれない快適な時を過ごしていた。 しかし、そんなひと時を邪魔するインターホンが鳴り響く。 俺は重い腰をあげると、しぶ...

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      • ≪ 前 俺はお返しの品を持って、ドッペル宅に赴いた。 自分の家にこもっていれば、お返しそのものをしなくてもいい可能性もある。 だが俺にとってホワイトデーとは、借金をした人...

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