うちの団地の一室には昔からアンデッドの山下さんが住んでいる。
明治生まれらしいが、アンデッドになったせいなのか死亡する前に記憶力が落ちたせいなのか何年生まれなのかは定かではない。
アンデッドになってから断捨離にハマり、役所にはアンデッドとして届けでてからというもの、自分の身分に関する書類は不要なので全部捨ててしまったそうだ。
あるいはそうしたものを捨てたのはアンデッドになってから年金の支給が打ち切られたことに腹を立てたせいのかもしれない。
だがアンデッドとはいえ野宿は嫌らしく家賃は払わないければならないし、娯楽を楽しまないわけでもない。
そうした費用を賄うためにアンデッドでも雇用してもらえる倉庫でピッキングの仕事をしているらしい。
週に三日程、繁忙期は五日程はピッキング・アンデッドとなるのだ。
彼がアンデッドになった原因は生前に黒魔術に造詣が深く、色々試していたせいらしい。
時折、アンデッドの山下さんの家にお邪魔してお話を聞いていると
笑いながら、君もアンデッドになってみないか?という冗談だが本気だかわからない誘いを受ける。
アンデッドになる方法は極少数の方にしか保持されていない。政府は基本的にアンデッド禁止法を作っている。なってしまった場合は仕方がないのだが。
自分はアンデッドになれば永遠の命を受けられるものの、見た目が骸骨化することや食事の愉しみがなくなること、親類に反対されるだろうことを考えるとなかなか踏ん切りがつかない。
一度、同じ団地のいたずら好きの加藤のおじいさんがアンデッドの山下さんに隠していた十字架をいきなり見せつけて、山下さんが一ヶ月も起き上がれなくなり、団地が大騒ぎになったこともある。そんな加藤さんも最近亡くなってしまった。
加藤さんは生前に死期が近づくと何度か山下さんにアンデッドになる方法を聞いていたようだが、山下さんはついぞ教えなかったそうだ。
なんでAIって段落ごとに改行するの?