2024-10-27

アンデッド山下さん

うちの団地の一室には昔からアンデッド山下さんが住んでいる。

明治まれらしいが、アンデッドになったせいなのか死亡する前に記憶力が落ちたせいなのか何年生まれなのかは定かではない。

アンデッドになってから断捨離にハマり、役所にはアンデッドとして届けでてからというもの自分身分に関する書類不要なので全部捨ててしまったそうだ。

あるいはそうしたものを捨てたのはアンデッドになってから年金支給が打ち切られたことに腹を立てたせいのかもしれない。

勿論、アンデッドであるから食費や医療費心配はないのだ。

だがアンデッドとはいえ野宿は嫌らしく家賃は払わないければならないし、娯楽を楽しまないわけでもない。

そうした費用を賄うためにアンデッドでも雇用してもらえる倉庫ピッキング仕事をしているらしい。

週に三日程、繁忙期は五日程はピッキングアンデッドとなるのだ。

彼がアンデッドになった原因は生前に黒魔術に造詣が深く、色々試していたせいらしい。

時折、アンデッド山下さんの家にお邪魔してお話を聞いていると

笑いながら、君もアンデッドになってみないか?という冗談だが本気だかわからない誘いを受ける。  

アンデッドになる方法は極少数の方にしか保持されていない。政府基本的アンデッド禁止法を作っている。なってしまった場合は仕方がないのだが。

自分アンデッドになれば永遠の命を受けられるものの、見た目が骸骨化することや食事の愉しみがなくなること、親類に反対されるだろうことを考えるとなかなか踏ん切りがつかない。

一度、同じ団地のいたずら好きの加藤のおじいさんがアンデッド山下さんに隠していた十字架をいきなり見せつけて、山下さんが一ヶ月も起き上がれなくなり、団地が大騒ぎになったこともある。そんな加藤さんも最近亡くなってしまった。

加藤さんは生前に死期が近づくと何度か山下さんにアンデッドになる方法を聞いていたようだが、山下さんはついぞ教えなかったそうだ。

アンデッドになっても生存本能、いや存在本能があるのか、あわや灰にさせられそうになった相手には教えたくなかったのだろう。

山下さんはこれからも何世紀も、いや宇宙が消えさるまでアンデッドとして存在し続けるのかもしれない。

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