2024-06-04

こういんやと罰

「こういんや?」

先生不思議そうに首をかしげる。

今日小学生の参観日である。授業では国語辞典の使い方を教えており、子どもたちは楽しそうに大きな辞書をめくっている。

「光」文字を使う単語を探してみよう」というテーマ辞書をめくる子どもたち。早速「光陰矢の如し」をみつけたらしい生徒が、なぜか「こういんや!」とだけ答えたため、先生意味理解できなかったらしい。

生徒が開いたページを覗きこみ、漢字を確かめ先生は、もういちど「こういんや?」と首をかしげ、黒板に「光陰矢」と書いた。「ごとし」はどこにいったのだろう。もしかして「光陰矢の如し」をご存知ない??まさかね。きっと「光陰矢」という単語もあるのだろう。

次の生徒が手を挙げる。

「こうそく!」

「ふふっ、こうそくは「光」じゃないぞ!」

にこっと笑って先生却下する。多分生徒は「高速」でもなく「校則」でもなく、「光速」と答えたのでは?なぜ確認せずに却下する?

先生のさわやかな笑顔を眺めながら、ふと大学時代の友人達を思い出した。

私達は氷河期世代だ。田舎国立大を出たくらいでは就職は困難を極めたし、教育学部の友人で、先生になれた子はただのひとりもいなかった。そもそも採用すらほとんどなかった。「先生になりたかった」って泣いてた子、何年も試験チャレンジして講師を続けていた子、本当に先生になるのは狭き門で難しかった。

しかし、現在はうってかわっての教員不足。うちの小学校でも例に漏れ教員は全く足りていない。クラスに応じた教員が確保できず、先生がかけもちで対応していた時期まであった。きっとこれは罰なのだろう、教員待遇改善してこなかった罰。その罰は、我々でなく小学生の我が子達が現在進行形で背負っている。

「これ、せんせいこれ!これも!」

また「光」の付く単語をみつけたらしい男の子辞書をひらいて単語を指差す。

「よし!それも「光」がつくな!」

先生はにこっと笑うと、黒板に「光明」大きく書き、「こうめい」と書き添えた。

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