昨日はクリスマスイブだった。
実はチキンとケーキを食べてお祝いするのは先週末に既に済ませてしまったのだが、父が気を利かせて小さなケーキを買ってきた。
ワクワクしながら食べるのを楽しみにしていると、母が驚いたように声を上げた。
「これ、アレルゲンが入ってるでしょ!なんで買ってきたの!」
弟は食物アレルギーを持っていて、それが含まれている製品だったのだ。
とはいえ、弟のアレルギーとはもう十年以上の付き合いになる。父もそこに気を使わない程馬鹿ではなかった。
「ちゃんと聞いたよ!Aさんに聞いたら、入ってないと言ってた!」
「でもこれ入ってるもの!」
実はそのケーキ屋は母が昔パートで働いていた店で、店長をはじめとした従業員とも知り合いだ。
内部的な事情を知っていたり、従業員とも深い付き合いがある。Aさんというのはベテランの従業員だ。
母は以前Aさんと話し、このケーキにアレルゲンが混入している事を知っていたのだ。
「でもAさんがそう言ってたんだよ?入ってないって。ちゃんと確認したんだよ?」
数分後、母がAさんとの電話を切って戻ってくると、やはりアレルゲンが混入している可能性が明らかになった。
どうも正確な所ではバリバリ使っているのではなく「まあ色々混ぜてるからそれも混ざってるかも」程度のものだそうだ。
「でもAさんに直接聞いて入ってないって言ったんだよ?なんでそんな事になるの?」
空気が悪くなり始める。アレルギー本人の弟は非常にばつの悪そうな顔でうつむいていた。こいつが一番かわいそうだ。
容疑者を整理する。
①母と事前に会話したはずのアレルゲン入りケーキを買ってきた父
②念を押しておかなかった母
③何故か父には入ってないと答え、母には入ってると答えたAさん
……いやどう考えても③だろ、絶対Aさんだろ悪いのは。食品を取り扱う人間としてやっちゃいけないでしょ。
にも関わらず、母はなぜか父に文句を言い続ける。
父は「アレルギーへの姿勢がこんな曖昧な店ってどうなの?危なくね?」という話をしている。淡々としているが口調に怒りが込められている。
だが母だけはなぜか別の話をしているのだ。「私の話を聞いてない!」が論点なのだ。
明らかにAさんが悪いのに、気付いたら夫婦間の喧嘩に発展していた。
っっっっめんどくせぇええええ~~~~~そんな事より今にも泣きそうな顔してる弟の事考えてやれよ!!と思う自分。
クリスマスの気分は最悪だ。
ちなみに最終的にどうしたかというと、飲み物を取りに行くフリをしてキッチンの戸棚の取っ手を破壊してみた。
そんで「たーいへーん!!!壊れちゃったーー!!」と騒いだ所喧嘩などなかったかのように流れていった。簡単なものだ。取っ手もネジ締めれば直るしな。
ケーキは疑わしい所だけ切り落として食べる事にした。弟に症状は出なかった。