眠りについたのは21世紀の半ば。
当時不治の病にかかっていた私は、一縷の望みをかけてコールドスリープで眠りについた。
解凍技術もなかった当時としては分の悪い賭けだったと思うが、私は勝ったようだ。
「あなたの病気を治すためには、免疫系と細胞の増殖の調整をすべてナノマシンに置き換える必要があります」
「そうするとどうなるのですか?」
「不死ではありませんが不老になります」
病気を治すためには致し方ない。不老不死ではないから、そう悪いことにもならないだろう。同意書にサインした。
注射一本で治療完了。医療に関してはすべて無料で提供されるらしい。まさに隔世の感だ。
翌日、弁護士のような人が訪ねてきた。
「あなたは、コールドスリープに入るときに普通預金を1,000万円程度お持ちでした」
「そうだったかもしれません」
「毎年だいたい平均して1%の利子がついて2億4千万円程度になっていますが、財産を継承しますか?」
その翌日、役人のような人が訪ねてきた。
「NHKです」
「NHK⁈」
「はい…」
「契約の更新はできなかったので年間受信料は13,650円です」
「はい」
「はい?」
「これまでの年間受信料13,650円の240年分と毎年8%の延滞料(複利)を合わせて16兆6081億1033万円をお支払いください」
「そんな無茶な!」
「あなたは昨日財産の継承に同意をしたので債務も継承されます」
「それにしたって払えないよ」
「払えない場合、現代では支払い完了まで債務者刑務所に入ることとなっております」
「……その刑務所に入ればいつか返済できるのか?」
「……」
5000兆円ほしい
ちょっとした星新一
日本の赤字国債も笑い事じゃないよな