2022-11-20

豚骨ラーメンに学ぶ

18歳、大学進学のために上京した。

入学後すぐにできた友人に「ラーメン食べ行こ」と誘われてノコノコついて行ったら、そこは味噌ラーメンの店だった。

私は普通ラーメンを食べるつもりだったが食券機には味噌ラーメン醤油ラーメン記載しかなかったため、どれが普通ラーメンなのか友人に尋ねたところ「ここは味噌ラーメンおすすめだよ。でもあっさりめな醤油も選べるよ」と的外れな答えを受けた。

改めて、味噌でも醤油でもなく普通豚骨ラーメンはないのかと問うと「ここは味噌醤油だけだよ」との回答が返ってきた。

ふーん珍しいタイプの店なんだなと思いながら、言われるがまま友人におすすめされた味噌ラーメンを購入した。

席につき、運ばれてきた味噌ラーメンを食べながら、「ラーメンの口だったけど、味噌ラーメンってのもたまには美味しいね東京には色んな店があるんだね」的なスタンスで友人と会話していたが、妙に話が噛み合わなかった。

その後、色んな人とラーメン屋に行くたびに自分と周囲の「ラーメン」に対する認識の違いをうすうす感じるようになった。

私は、福岡県の少し田舎の方の出身だ。

近所にラーメンはいくつもあるが、全て豚骨ラーメンの店だった。選べるメニューは【ラーメントッピングサイドメニュードリンク】のみ。

そして、どの店も「うちは豚骨ラーメンの店です」と言っていない。スープ豚骨であることが当たり前すぎて、明記されていないのだ。まあ、明記されていたかもしれないが、それを気にする機会もなかった。

自宅で食べるインスタント麺も、ほとんど毎回うまかっちゃん。たまにカップ焼豚ラーメン

私は福岡で育った18年間、「ラーメン」とは豚骨スープの麺のことを指すものだと思って生きてきた。

もちろん味噌ラーメン醤油ラーメンがあることも知ってはいたが、それはラーメン界の亜種のようなポジションのものだと認識していた。

そのため「ラーメン食べ行こ」と言われて味噌ラーメンの店に連れていかれるのは、「今夜はカレーよ」と言われて食卓スープカレーが出てくるようなちょっとした衝撃と違和感があった。

その後、大学生活を送る中で徐々に答え合わせをしていき自分固定観念にようやく気づいた頃には時すでに遅し、私は「東京ラーメンを認めない、小うるさい福岡県民」と思われるようになっていた。

そんなつもりなかったのに。

狭い世界での当たり前をこの世の常識だと思い込んだまま長く生きると、自分世界の外の常識に気づくのはすごく難しいんだということをこの時に学んだ。

今も、私が好きなのはずっと一途に豚骨ラーメン。でも、味噌ラーメン醤油ラーメン塩ラーメン鶏白湯ラーメン、色んな味のラーメンがあること、そして豚骨ラーメンけがラーメンではないことをきちんと理解して生きている。

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