あと数年で三十路に突入する女だが、これまでの人生で一度も性被害らしきものにあったことがない。
唯一記憶にあるものとすればアルバイト時代の社長に急に裸エプロンの話をされて「それってセクハラですか?」「うん」「おもんないしキモいんでやめてください」「わかった」で話が終了した数分間くらいのものだ。あれはセクハラというより単に会話チョイスとコミュニケーションが異様に下手なだけの中年男性だった。
巷では痴漢がどうの、エレベーターに乗る時はどうの、下着泥棒がどうの、夜道で歩く時はどうのと多種多様な性被害話&対策&それに伴う男女バトルが繰り広げられている。いつの事かは忘れたが、SNSで「ほとんどの女性が何らかの性被害に遭っている」というクソデカ主語の言説も見かけた。
まあ実際そうなのかもしれない、そうではないのかもしれない、そこの部分の判断は私にはつかない。自分で自分の身を守る行動を取らずともお気楽に生きてこられた私はたまたま、極めて稀な幸運な人間だったんだろう。
被害に遭った他人のケア、友人知人のケア、やるべき事やできる事は数多くある。ただ「ほとんどの女性が何らかの性被害に遭っている」と掲げて啓蒙活動を行い続ける彼女らを見るたびに、その説に則れば男性側にも女性側にも帰属できない私はどの立場から問題解決について考えるべきなのだろうという疑問が生まれる。唯一わかることと言えば私みたいな幸せな立場の人間が「世の中って言うほどクソでもなくない?」と口に出してしまうのは絶対にダメ、ということだけだ。だから匿名のここで放流しておく。別に現実から目を逸らしてるわけじゃない、私から見える私の周囲の現実はこれなんだよ。