2022-02-12

君の居場所 僕の居場所

vtuberは夢を与えてくれた

この僕に夢を……そして生きる意味

ただいまぁ……あまり広くない部屋に力無き声が響く

壁を見れば推しタペストリーが僕を出迎えてくれた

部屋一面には推しが広がる空間

僕だけの唯一の空間

誰にも邪魔されない空間はそこにあった

大型のTVに電源を付けその時を待つ

「早く来ないかなぁ……」

待つ時間幸せだった

口癖になりつつあるがそれも良い

そして待ちに待った声が脳を貫く

「こんるしー!」

ー来た!!待ってたよー

こんるしーと僕も返す

一人の部屋に響き渡る幸せな声と時間

幸せだった

普段誰にも見向きされなくても家に帰ればこんなにも満たされるのだから

配信開始から2時間経過した位だろうか

僕に取っての終わりが始まりを告げた

画面左上に表示されたボイスチャット

名前は四年前から疑惑のあった人だった

コメントは今から帰るねー

みーちゃん

点と点が線となり

疑いようも無い事実

刃物を胸に突き刺されたようだ

その痛みが響けば響くほど

僕の居場所を狭くしていく

終の住処だった居場所が形を無くし消えていく

僕の居場所が……

推し幸せを願うのも……

それは出来なかった

夢を見させてくれるなら最後まで夢を見させてくれたかった

それが例え叶わない夢だとしても

僕は台所に行き

包丁を箱から取り出す

一応無いだろうけど手料理を振る舞って……等と浮かれて新品のまま今日この日まで使われて居なかったのだが

最初最後か……」

節約して買ったグッズの数々

少ないながらも勇気を出して配信スバチャした日にありがとう!と言われた時

仕事が上手くいかなくて全てがどうでもなり僕には誰も頼るものがいない時にふと現れたのがるしあだったんだ……

それも今は全てが懐かしい

リアルでは過ごせなかったけどそんな短い間に夢を見させて貰ったこ

「っ………騙すなら騙しとう……せよっ」

声にもならない慟哭が部屋に響く

仕事人間関係が辛く

SNSをとうして伝えたら

一緒に生きようねと…

今では思えば思う程の生き地獄

推し幸せを願うのが推しならそんな……もう辞めよう」

何を言っても何を叫ぼうとも届かない

スパ等でほのめかす事も出来るがそれはヤメた

彼女には幸せになって欲しいけれど

僕の胸に大きな穴は埋めきれないか

震える手で新品の包丁を手に取り脇腹を突き刺す

彼女を守る為にと鍛えてきた身体は無惨にもその凶気によって失われていく

命の灯火が失わせまいと鼓動打つ中 苦しみで更に3度4度僕の身体を突き刺す

真っ赤な鮮血が推しを真っ赤に染めて僕の身体はふらふらと向かうべき場所へ逝く

ありもしない幻想を抱きながらベットへ突っ伏すと横にはいつも抱きながら寝ていた物が

身体から流れる血で真っ赤に染まっていた

意識朦朧とする中

最後に言いたい事を吐露する

「る…ネクロマンサー……来世は……あるならそっちにうまれ……後…かのじょがしあわ……せで……」

僕は死んだ

自分自身の手によって

僕に届くはずの無い指輪

永遠を誓ったエンゲージリングは闇の中に消えた

……………

力が欲しいか

謎の声に僕は目を覚ました

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