家族には理解されず、なぜ仕事を辞めたと責められた。友人にも相談できなかった。
人をどう頼ったらいいのか分からない。誰も信じられない。
食事を摂ることも風呂に入ることもままならず一日中泣きながら布団に籠っていたが、多少は回復したようで、食事を作ったり散歩をするほどの元気は出てきた。
誰かの話を聴いていたいし、社会に触れていたい。
しかしテレビやラジオはノイズが多すぎて、すぐに拒絶してしまった。
時間を持て余しているので漫画アニメゲーム映画小説等のコンテンツを手に取ってみたが、物語がまるで頭に入らない。
薬漬けの脳は考えることをすっかりやめていた。
何気なくYouTubeを開いた時に目に留まり、今までは興味を持たなかったVtuberの動画を見始めた。
Vtuberと言ったら美少女のイメージだったけれど、それは人の形をしていなかった。
人間だけど人間ではない存在は心への負担が少なく、食事さえ拒否をしていた脳にもするりと入ってきた。
負の感情以外をすっかり忘れ去っていたけれど、配信を見ているうちにいつしか笑うことを思い出した。
その親しみやすさは時に弊害ともなるけれど、Vtuberは二次元のフィルターを通すことで発信された情報をまろやかに届けてくれる。ごく稀だが、コミュニケーションをとる事もできる。