私の中での私はいつも危ないがどこか魅力のある顔つきで、肉付きがよく喘ぐのが上手く、そこらの女が歯ぎしりするほどの名器を持った女として認識されていた。
現実はチビデブで肉のために然る締まりを持っているだけのメスで、喘ぎ声は毎晩聴くAVやシチュエーションCDの受け売りなのに。
今まで所謂恋愛経験0だが女が恋しいという男や年齢に惹かれた男のみ相手にしてきた故に、自分さえ告白すればきっと付き合えると思いながら生きていた。
今日の昼に耳に入った彼女という単語は、しばらく脳にこびりついた。バツイチで、30代で、ええとなんだっけ。
第三者視点で聞いてもヤバそうなその女は、私の好きな人に抱かれたのだ。
吐き気がする。
そういえばクラスカースト上位の女は男の先生ばかりに甘えた声を出す。学科一可愛い女性のスマホ裏には彼氏とのプリクラがある。市ヶ谷駅までの道にはカップルがいる。
この世って、思ったよりドラマだった。
だけど私にはそのドラマが一生訪れない。
どうしてだろう。今までの報いかな。
某禅宗で僧侶をしていた大好きな非常勤講師に名前を覚えられている。私のスマホ裏は信頼するフォロワーとのプリクラだ。今週末、成人祝いに買ってもらったそんなに高くない指輪を取りに行く。
なのに、私は一人だ。彼氏は愚か、昼食の時に隣に座ってくれる友達も喫煙所に行く友達もこの思いを吐き出す友達も。
友達も恋人もいない、好きな人への感情をどこにぶつければいいかわからなくなってしまった自分は、一体これから何処に行くのだろう。
ああ、大好きな同性のフォロワーと付き合いたいなあ。
スマホの裏を見た。