こっちに引っ越してきたばかりのとき、サミットの二階はドラッグストアではなくて衣料品売り場でした。
当時4才か5才の僕には春先用のコートは大木で、ハンガーラックにかかったそれらは森のように見えました。
「エルマーのぼうけん」だかなんだかに夢中だった僕は、母さんが夕ご飯の食材を買っている間、森を探検していました。まぁ昔は今よりもっとおおらかな時代だったんです。許してくださいよ。
すると、森の中で、自分よりちょっと小さい女の子と出会いました。引っ越してきたばかりで幼稚園にも行っていなかった僕は、おんなじ遊びをしているその子が、とても身近な人に感じられ、とても好きになりました。紳士服から婦人服まで探検し終わった後、婦人下着の林までやってきました。
僕は、何を思ったか、あるいは何も考えてなかったのか、前の幼稚園で流行ってたギャグを思い出して、それを口走ってしまいました。手をパンと叩き、手をピースにし、OKサイン、双眼鏡を除くポーズ。「パンツー丸見え」というギャグです。意味を深く考えたことはありませんでした。誓っていうと、僕は下品なことが嫌いです(当時)。出来たばかりの友達はお手本みたいな「キャー」を言って去ってしまいました。
母さんにそれを報告したら呆れられたのを覚えています。よく分からんなぁ女の子はってバカな僕は思ってました。
未だによく分からんなぁって思ってます。ジャンゴ・ラインハルトが左手で数えられるくらいには恋人ができたりしました。流石に何が下品かは分かっていて少しは機嫌も取れるようにはなりました。でもなんでしょう、相手が不満を募らせるタイプの怒り方してるときの気まずさ。こう、1つクリアしたら新しい難しさが出てきます。
こないだ駅で「努力しても無駄」を連呼し、「樹海へ行け」と自分に言い聞かせるように、自分以外のその他大勢に向けてささやいてる、ちょっとおかしい人を見かけて思い出しました。なんでだろう。本当になんでなんだろう。