2020-12-05

中学生の頃、同じクラス微妙距離感の子がいた。

の子はクセが強くて、強気で、いじめっこ的な気質もあって、私は苦手だなぁ…と思っていた。

実際、その子とはあまり仲良くならずに、稀に話すのみであった。

でもその子の絵は卓越して上手くて。

小学校の中では絵が上手い方だった私は、段違いに上手いその子の絵に、嫉妬さえ通り越した、憧れの念を抱いた。

の子しょっちゅう絵を描いていた。

の子休み時間に描く絵は、街の電柱看板にエアスプレー落書きされているようなポップな画風が多かった。軽快で攻撃的で、少し怖い感じの絵。その子は目玉のモチーフが好きだったっけ。

の子の、美術時間に描く絵は、普段とは違う雰囲気を持っていた。毒と繊細さとを纏っていて。その子の重い内面を予感させた。

これは今になって改めて気づいたけれど、その子普段、強く振る舞うが、その実、脆くてセンシティブ性格だったろうね。

卒業式の後、教室に戻ってきて、クラス会も終わって、帰る時間となった。自由時間ができると、何人かの子たちが、卒業アルバム最後の空白のページに、メッセージを書いたり書いてもらったりをし始めた。

私もいつの間にかそのやりとりに混ざっていて、そういうやりとりを何人かとしているうちに、いつの間にか教室がガランとし始めていた。あの賑わいは教室の中から体育館の前やロビーなどの外に移っていたようだった。

教室は、まだセーターが必要なくらいには寒かったが、春の陽射しが、教室の床の木のタイルを暖めていた。

の子も、まだ教室に残っていた。

同じクラスにいた間、あまり会話もなかった私とその子であったけど、私は彼女に絵を描いて欲しかった。

葉山仮名)も、なんか描いてくれない?」

と私は彼女にお願いをした。

すると、彼女はいものごとく、めんどくさいなあとか、しょうがいね!みたいに小言を言いながら、でも、楽しそうに私のページにイラストを描いてくれた。

卒業式の日も、その子の筆箱にはずっしりとたくさんの色のサインペンが入っていて、色も選ばせてくれた。

私はその子が描いている間、私は彼女のページにも凡庸メッセージを書いた。

そうしているうちに、隣のクラスから彼女親友彼女を迎えに来て、その子は急いで教室から出ていった。

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