中学のとき、毎年一回校外(と言っても徒歩圏内だけど)に出かけて水彩画を描くスケッチ大会っていうのがあった
一年二年のときは素直にいいと思った風景を描こうとした結果どこにも焦点が絞られない散漫な印象のショボい絵になってしまい、悔しかったからしばらく構図を考えた
それで他の人が時々描いていた神社の赤い鳥居に焦点を当ててみようと思い立ち、鳥居の真下から思い切り見上げたアングルで鳥居の上部分と空しかうつらない、あんまり風景画らしくない絵を描いた
そういうひとつのものに注目する構図をとってる人は他にいなくて、実際俺が描いてるのをみて「それパクろ!」つって横で描き始めた人もいた
描くものが少ないから下書きにかかる時間が短くて色塗りに集中できるし、俺はけっこう水彩絵の具の色を作るのが得意だったんで、我ながらなかなかいい絵ができた
大会が終わったあとの美術の時間に美術の先生にひとりずつ絵を持っていって講評をもらう時間があったんだけど、いい絵をみたら「いいね!」と言う癖があったその先生に一際デカい声でいいねと言われて誇らしかった記憶がある
その年から美術教師が特にいいと思った絵を選んでコンテストをやるっていう企画が始まって、俺の鳥居の絵もノミネートされた
問題はここで、コンテストだっつって接収されたまま絵が返ってきてない しかもコンテストの結果がどうだったのかも結局わからん
せめて一位をとってたりしたら(贔屓目は入ってるが充分一位をとりうるポテンシャルがあったと思う)まだ心も晴れたんだけど、よくわからないままに生涯一うまくできた絵を取られたというのは悲しい 写真も撮ってないし…
普段全然絵なんて描かないし、絵心も我ながら全然ない そんな俺が半年以上暖めたアイデアによって描いた渾身の絵が奪われたままになった
写生大会