私の父方の祖母は御年80で、とにかく元気だ。
叔母一家(父の妹の一家)と同居している二世帯住宅で、掃除洗濯料理の全ての家事をこなし、面積の広い家庭菜園の管理をし、二日に一度は市民プールで泳ぎ、夏になったら近所の夏祭りに出店し、習い事をしていて友人も多い。
昔は小学校教師で、その縁で祖父と知り合ったらしい。今でも当時の教え子の方からの年賀状が届く。
スマホやLINEの使い方は少し不慣れだけれど、勤勉で好奇心旺盛で、若者の趣味に何の偏見も持たずむしろ興味を抱いている。
年末の紅白歌合戦では米津玄師のパフォーマンスを絶賛していた。
私が帰省して祖母の家に顔を出そうとすると、いいと言ってるのに毎回必ず車で送り迎えをしてくれる。
「少し痩せたんじゃない?ちゃんと食べなきゃだめよ」と成人済みの孫にお小遣いを握らせてくる。
「あなたが元気ならそれでいいの。東京で上手くいかなくたって、元気でいてくれれば何も問題は無い」
未だに大きな病気一つしていない、遠い地にいる祖母は今日も、背筋をピンと伸ばしてエプロンを巻き、山内惠介の演歌やドラマを見ながら溌剌と家事や趣味に勤しんでいるのだろう。
母も父も、「あれだけ元気なら100歳まで生きるんじゃないか」と冗談ともつかないことを言って笑う。
祖母と一緒に暮らす叔母もその血を受け継いでいるのか、もう成人する子供がいる世代だけれどジャニーズのコンサートに足繁く通い、お布施をしている。
だからいつか必ずお別れの時が来るのかと想像するだけで、途轍もなく悲しくなる。
余程のことが無い限り、私よりも先に祖母はお墓に入るだろう。
その時私はどうするのだろうか。祖母がいない人生なんて、考えても考え付かない。