私とほぼ同時期に勤め始めた生き急ぎ高校生バイト君が辞めてライバル店に移った。
そのせいでオーナーのテンションがおかしな方向性にアゲアゲになってしまい、迸る生き急ぎ高校生の愚痴を聴かされまくるシフトだった。しかもオーナー、疲れたからって次の人が出勤してくる20分前に帰るし。
生き急ぎ高校生バイト君が生き急ぎ高校生と呼ばれる所以は何かといえば、悪質クレーマーに血気盛んに言い返すからだ。私もその現場に遭遇したことがあるけど、怒鳴る客の倍怒鳴り返していた。そこまで客とガチバトルできる気概はちょっと羨ましかった。オーナーはいつ流血沙汰になるかとヒヤヒヤしていたというけど。でも子供とはいえ身長180cmほどある男がガチギレすると、流石に頭の特殊なお客様がたも殴ろうとはしないようだ。
オーナーが、生き急ぎ高校生君はプライドが高くてこっちが出来るだけ優しく言っても全然言うことを聞いてくれない、などと愚痴っていたけど、オーナーは口調は優しくても言うことが一々何でそこまで嫌みなのか謎な感じの嫌味さかげんので、まぁ、言うこと聞いて貰えないのは仕方ないかな。
私とか無駄なまでに人当たりの良さげで実際人当たりのいい人間の前では、素直な高校生であった。
生き急ぎ高校生君の接客態度がちんたらしていて悪いのがてんで治らない、というのもオーナーにとっては悩みの種だったらしいけど、私に言わせれば、コンビニの夕勤で態度いい人間はレアキャラなので仕方ないではないか。実際、当店の夕勤で態度いいの私だけなのである。オーナーだって夕方は疲れたからって不機嫌全面に出して接客してるんだもの、そりゃ説得力皆無。
生き急ぎ高校生にしてみれば、皆ひどいのに俺だけ何で怒られなきゃならないんだっていう理不尽だったろう。
生き急ぎ高校生に必要だったのは、歳の近い同性の尊敬出来る先輩だろう。
私と組むと私につられてちょっとは丁寧になるようであったけど、やっぱり年齢性別が違うので、増田さんは増田さん、俺は俺、みたいな線引きがされちゃうんだろうなと思った。