幸せにはなっていなかった。
勉強嫌いだし要領も悪いので結局仕事の待遇は今よりも良くはなっていなかった。
自分の作りたいものを直接作るよりも今あるツールを組み合わせればいいとハッキリ理解して結局自分の為にコードを書くことは無かった。
ゲームを作りこんでわかったことはゲームはやるほうが楽しいという事だった。
自分がかつてプログラミングに感じていた楽しさは優越感と有能さの証明だった。
中学生の頃の自分がHTMLのベタ打ちや簡単なゲームの製作で感じていた快感は、クラスの大勢の奴らより優れた能力を持っている自分の実感でしかなかった。
公立中学のクラスで1番(実際は他にもこっそりやっている奴がたくさんしてクラスで5番目程度だったのやも知れぬが)程度の知識は、本格的なプログラマーの世界に出たら下っ端も下っ端だ。
それをある日分かったから俺はプログラマーの道を諦め、今の仕事に就いたのだった。
この仕事を長くやって、プログラミングなんてもう10年も書かなくなって(ExcelのマクロやHTMLやWordPress程度のプログラミング未満の何かはちょくちょくやったが)、そうしているうちに少しずつ自分の無能さを忘れていた。
だからいつの間にか「俺は本気を出してプログラミングをやってプログラマーになれば幸せになれていたんだ」と妄想を始めたのだ。
今やっと思い出した。
クラスの連中よりも俺が優れていると感じられる場所が欲しかっただけなんだ。
だから、俺はプログラマーになっても幸せにはなれなかったんだ……。
目が覚めたぜ……悪い夢……いや、良い夢だった。
醒めてしまえばただの夢だ。
現実に戻ろう。