もう15年くらい前。
当時の私は高校生で、部活で帰りが遅くなる日々を過ごしていた。
そんなある日、自転車での帰り道、もう午後9時を過ぎたくらいの時間の頃。田んぼの中の一車線にしかならない細い道のT字路の手前で軽トラが私の前に回り込んで止まった。そして車から降りて来た男性がこちらにずんずん近づいてくる。
軽トラと男性の体で道は塞がれてしまい、こちらは自転車を降りざるを得なくなってしまった。
男性は何も言わずに近づいてくる。私は男性を警戒しながら「何かご用ですか!?」と声をあげる。しかし男性は無言のまま。
で、一方的にこちらの顎を掴んで、顔を覗き込んで来た。私はパニックで「何の用なんですか!?」としか言えない。
男性はそのまま私の顔を凝視すると、また何も言わずにこちらを突き飛ばして来た。
とりあえず男性の手からは解放されたので、急いで自転車に乗って逃げた。でも、軽トラで追いかけて来て、こちらを轢くつもりなんじゃないだろうかというくらいにギリギリまで近づいて通り過ぎて行った。
当時はケータイが出始めの頃で、私はまだケータイを持っていなかったので公衆電話があるところまで急いで行って家に電話した。そして弟に迎えに来てもらって家に帰った。
帰り道、私は自分が思ったよりもパニックになっていたことを自覚した。あれだけの目にあっておきながら逃げもしないで「何かご用ですか!?」としか言えなかったなんて。もっと危ない目にあっていた可能性がいくらでもあったことに気がついて、背筋が寒くなった。
そして、男が何を考えていたのか考えた。その結果、誰かを探していたのだろう、という結論になった。それだけでなければ、私が助かった理由がない。
けれども逆に言えば、あの不審な男に探されている、危険な状態にある女性がいることになる。
そして家に帰って当然通報をした。自分がどんな目にあったのか説明して、男と車の特徴を伝え、誰かあの男に追いかけられている女性がいるかもしれない、ということもはっきり言った。
「で、あなた怪我してないんですよね?」
確かに私は怪我をしていない。男に掴まれた顎に赤い跡が残っているだけだ。
それを伝えると、じゃあもういいですね、と言われ、電話を切られた。本当にそれっきりだった。
本当に心の底から、あの警察官仕事してないな、と侮蔑している。
だからこそ、その後大学に進学し上京して、夜中に一人チャリで走ってた時に職質された時は、言い過ぎだと思うが感動した。都会では警察がちゃんと仕事をしている、って。
まぁ電話の向こうの警察官がその男性の可能性もなくない
東京の警察が同じようなことが起こったら動いてくれるかというと微妙だと思う
積極的に不審者を探しているのだから、不審者についての通報があったら何かしら動いてくれそうに思うのだけどなぁ。