前回までのあらすじ
俺、マスダ!
『ヴァリアブルオリジナル』の新パックを求めて町に繰り出したんだ。
けど、子供みたいな大人たちのせいで、どこもかしこも売り切れだ。
途中、ジョウとかいう明らかに嫌な奴におちょくられるしで散々だぜ。
でも、俺はまだ諦めない。
きっとどこかに新パックがまだあるはず。
疲れた兄貴が「もう帰ろうぜ」と言い出す前に、何としてでも見つけなきゃ!
あの後も何件と回るが、やはりどこも売り切れだった。
俺は付き添いだけで酷く疲れているので、弟に至ってはボロボロだろう。
こんなにも苦労するなら供給が潤沢になるまで待つほうが懸命だと思うのだが、弟は頑なであった。
手に入らないものほど、余計に欲しくなるのだろう。
ここまでくると手ブラで帰りたくないという意地もあったのかもしれない。
うらぶれていた弟だったが、ふと顔を向けるとその目に見る見るうちに光が差す。
「あ……あった! あれだ!」
そう言うと弟は走り出す。
俺もゆっくりと向かうと、確かにCMで観たのと同じパックがそこにあった。
ようやく見つけた新パックに弟の表情が緩む。
息を調えると同時に、感動を噛み締めているようでもあった。
しばらくすると、弟は手はゆっくりと伸ばした。
が、そこに見知った手が同時に伸びていく。
ジョウ先輩だ。
「な、なんだよ、あんたは5箱も買ったじゃないか。もう買う必要ないだろ」
「5箱も買ったけど、ベリグレも、クアスペもなかったのよ! 5箱も買ったのに!」
「知るか! 俺は小遣い分だけ、10パックほどしか買わないのに。全部買おうとするなんて、それが大人のすることかよ!」
「あなたの買った中に、もしもベリグレがあったりしたら悔しいじゃありませんか。ましてやクアスペがあったりしたら、悔しくて寝れなくて……明日は寝不足状態で労働ですわ!」
ジョウ先輩が妙に必死なのはあの人の性格もあるが、そーいう事情もあったようだ。
子供の遊びの前では、大人ですら子供になってしまうという話はよく聞くが、それを考慮してなおこの争いに俺は見苦しさを感じた。
見るに堪えないものであったが、俺は事態を収めるつもりはない。
聖戦とはかけ離れた醜い戦いでも、弟は自身の力で戦い、勝ち取るべきなのだ。
あと、面倒な上にロクなことにならないし、付き添いだけで酷く疲れていたので俺は絡みたくない。
そうして二人は押し問答を繰り広げていたが、とうとう見かねた店主は二人の間に割って入り、一つの提案をした。
「どうしても譲れない。それでも決めるなら、方法は一つではないですかな?」
その言葉で少し冷静になった二人は、腰に携えていたカードの山に手を添える。
「バトル!」
「アンド!」
「ファイト!」
すると突然、店主含めた三人はまるで打ち合わせしたかのように、掛け声を店内に響き渡らせる。
「あー……それ時間かかりそう?」
「場合による!」
前回までのあらすじ 俺、マスダ! いま、この世界では『ヴァリアブルオリジナル』がすっげえ流行っているんだ。 かくいう俺も、その流行の住人なんだけどね。 今日も家で何気なく...
主題歌:「ファイティング・ジャストコーズ」 歌:ポリティカル・フィクションズ 作詞:マーク・ジョン・スティーブ 作曲:サトウスズキ 俺は生まれ変われる 現世での生活は...
≪ 前 前回までのあらすじ 俺、マスダ! 体力も限界に近づいていたその時、とうとう新パックを見つけたんだ。 けど、あのジョウとかいう明らかに嫌な奴が、この期に及んで邪魔し...
≪ 前 前回までのあらすじ ん……ああ、終わった? どれくらい時間がかかったか分からないが、決着がついたらしい。 弟の解説によると、デッキの完成度とその戦術の理解度が明暗...