そしてハロウィン当日。
まずミミセンだが、耳のよすぎるあいつは、世の中の多すぎる雑音が嫌いで耳栓を普段つけている。
つまりミミセンがないとあいつの普段のパフォーマンスは著しく落ちる。
入浴時などの耳栓を外している僅かな隙を狙って奪取、自宅にあるスペアも回収し、買いに行くにも取り扱っている店はこの日は休業だ。
そしてタオナケだが、あいつの超能力は10回に1回成功する程度で、かつ成功しても時間がかかる。
シロクロは住処をクラスメートたちと総力をあげて見つけだし、あいつのハロウィンの衣装をド派手な色にすり替えておいた。
モノトーンではない衣装では、あいつは普段の半分以下の力しか出ない。
こうして、残ったのは弟だけとなった。
「それでも、俺が目の前にいるのは意外って顔だな」
「白々しいことを言うなよ。俺が念のため、ドッペルゲンガーを置いていたのも分かっていたんだろう」
弟には他にも仲間がいた。
弟と背丈が同じで、人の真似をしたがるドッペルゲンガーだ。
こいつを利用して影武者にすることで、撹乱する可能性を予測していた。
もちろん、そいつと弟をよく知っている俺ならば見分けることは容易だ。
「ドッペルゲンガーを捕まえたという連絡を先ほど貰った。その連絡係は俺の弟だといっているがな」
実の所、俺の考えたバカげた作戦なんてなくても、全員を捕まえることは可能だっただろう。
対策本部のほうが圧倒的に人数が多く、子供の知恵と行動力で出来ることには限りがある。
だが、それでも俺が大人げなさにこだわったのは、弟の信条を切り捨てられなかったからかもしれない。
「大人の理想を子供に押し付けるな! トリックかトリート。どちらもあって、そして本気でやるのが俺たちの『楽しくやりたい』なんだ」
避けずにあえてそれを受け、俺のメガネが真っ赤に染まる。
伊達メガネの俺にとって、それは弟の最後の悪あがきでしかない。
俺の無慈悲な一撃によって弟は頭を垂れ、ハロウィン大作戦は幕を閉じたのだった。
イタズラという行為は、ある意味でコミニケーションの一環でもある。 相手が許してくれるだろうという信頼と、そして許すという反応で信頼を示すわけだ。 もちろん、そんなことに...
≪ 前 こうして弟たちのハロウィン大作戦は終わったが、ハロウィン自体が終わったわけではない。 弟や仲間たちにも楽しむ権利があるのだ。 大人たちの考えうる範疇では、だが。 ...