こうして弟たちのハロウィン大作戦は終わったが、ハロウィン自体が終わったわけではない。
弟や仲間たちにも楽しむ権利があるのだ。
しかし「トリック・オア・トリート」という言葉とは裏腹に、その手には菓子を受け取るためのカゴしかない。
「間違いを正した達成感があると共に、何か後戻りできないことをした気分にもなってる」
「俺はそれを言語化できるが、大人たちの味方をした時点でその資格はないのさ」
そんな会話をしている内に、訪ねる家は最後となっていた。
マスダ家の隣のタケモトさんだ。
いつも突然の来訪で酷い目にあっていたが、今回はちゃんと用意しているらしい。
「あ? ねえよ、そんなもん」
タケモトさんのぶっきらぼうな回答に、俺も含めてその場にいた皆が素っ頓狂な顔をした。
「おい、ないって言っているぞ」
「用意していた分が、先約でなくなったのかもしれないな」
ない以上は仕方ないので俺たちは弟を連れて速やかに帰ろうとする。
タケモトさんのその言葉は挑発でもあり、発破をかけるようでもあった。
弟たちは仲間たちと目線を交わしていたが、俺はメガネについたペイントを落とすのに集中していて気づかなかった。
弟たちは、どこに忍ばせていたのか水鉄砲をタケモトさんに向けて放ち、怯んだ隙に部屋に乗り込む。
「小僧共、おいやめろ」
タケモトさんはのろのろとした足取りで弟たちを追う。
「お前らでやってくれ」
「いや、俺たちだけ行っても止められねえよ」
イタズラという行為は、ある意味でコミニケーションの一環でもある。
相手が許してくれるだろうという信頼と、そして許すという反応で信頼を示すわけだ。
もちろん、そんなことに確証なんてないのだから「イタズラはいけない」と大人たちは言うだろうし、それは何一つ間違っていない。
でも実の所、大事なのは『それを最後に決めるのが誰なのか』ってことを、大人たちは知っているのだ。
そしてハロウィン当日。 まずミミセンだが、耳のよすぎるあいつは、世の中の多すぎる雑音が嫌いで耳栓を普段つけている。 つまりミミセンがないとあいつの普段のパフォーマンスは...
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