そこには俺より長く居る人も含め10人余りのこぢんまりとしたものだったが、あるとき荒らしと思しき書き込みが現れ始めた
それは他の利用者に罵詈雑言を吐いたりするようなものではなく、ただひたすら意味不明な(それでいて特徴的な)文章を毎日何度も投稿するというものだった
管理者がNGワード指定をしようにも、とにかく精神分裂病患者のように支離滅裂な文章なので防ぐ事も出来ず、IPアドレス指定で書き込みを禁止すると即座にIPアドレスを変更して投稿を続けるという悪質なものだった
管理者はやむなく別の掲示板をレンタルし、元々の常連達にメールなどで回覧、荒らしにアドレスを知られることなくそこで平和な日々を取り戻した
荒らしはというと、そんな事も気にせずほとんど誰も書き込まなくなった掲示板に荒らし続けていた
それから一年か二年過ぎた頃、管理者が「このBBSの常連でオフ会というものをやろうぜ」と言い出し、時間や場所の都合のついた常連の一部が賛同、そして開かれる事となった
その際、荒らしが居る方の掲示板にも「念のため」とオフ会の告知をしていたのだが、それがまずかった
荒らしはオフ会会場(管理人の自宅近くの居酒屋)に到着する直前に掲示板を荒した際のハンドルネームを名乗り、まるで我々と同じ古株のように振る舞い始めようとした、その時、隣に座っている常連の一人(常連達の中でも最古参で、身長190cm体重105kgの巨漢だ)が、その荒らしの顔面に渾身の力をこめて鉄拳をめり込ませていた
まるでボウリングのボールのように床を数メートル転がった荒らしは、鼻から血を吹き出しながら「な、何するんだ!」と喚いた
最古参の巨漢はその様子を見て、ニッコリと微笑み「ああ、安心したわあ」とつぶやいた
そして腰を抜かしているらしい荒らしの前に立ち、ゆっくりとしゃがんで荒らしの顔を覗き込み、こう言った
「お前さ、俺たちが荒らすのやめろと何度言っても止めなかったじゃん?お前に何て言ってもお前全く反応しなかったじゃん?だからさ、お前って本当は人間じゃないんじゃないかって、俺らの間で噂になってたんだわ。いやあ安心したわ。普通の人間が殴られた時と全く同じ反応したって事は、お前ってやっぱり人間だったんだなって。いやあ、よかったよかった」
予約したのが広い個室だったことが幸いし、店員には発覚しなかった
とうぜんだが、その掲示板に書き込む者もいなくなった