彼は運動も勉強も大の得意で、クラスの人気者だった。彼の魅力である身長の低さも、女の子達の母性を擽り可愛い可愛いと口々に言われていたし、体重も軽かったので彼が好きな女の子達は順番で彼を抱っこしたりしていた。
そんなある日、席替えで私は念願だった彼の隣を射止めた。そこは黒板からは遠い一番後ろの席だった。隣というだけで、心が楽しく跳ねたし苦手だった勉強も九九も必死に取り組んだ。恋の力は子供にも効果があるのだと私はこの時初めて知った。
そうして席替えから何日か経った頃、国語の授業を分からないながらに先生の説明を一生懸命聞いていた時の事だった。
机の上に置いてあった私の腕を隣の彼が机の下に、少し乱暴に振り落とした。いきなりの事で何が起こったのか分からなかった私は慌てて彼を見た。すると彼は私の方を見ていたかと思えば、机の下に落とされた私の手をぎゅっと握り手を繋いできたのだ。
初めて繋ぐ彼の掌の体温に子供だったくせに私は心臓が破れてしまうのではないか、と疑ってしまうほどドキドキした。そしてその日は授業の間中片手でノートを取りながらずっと手を繋いでいた。
もちろん先生の話は一切私の耳には入らなかった。
何日か手を繋ぐ日々が続いた頃、彼の動向が変わった。
いつものように手を繋いでいたある日、彼が授業中にも関わらずいきなり繋いでいた手を離した。私は自身の掌の空虚感に戸惑いつつもあまり気にしないようにしながら、授業を受ける事にした。するとその時、彼の手が私の太ももをやわやわと揉んだ。小さな手で揉まれる自分の太ももをぼうっと見ていた記憶がある。彼をチラリ、と見ても彼はニコッと笑っただけで授業中なので喋らない。
それでも私は拒絶するどころか、大好きな彼に触れてもらえるのが嬉しくて、彼が触りやすいかもしれない、と母に不審に思われながらもほぼ毎日スカートで登校した。
左手で太ももを触りながら器用にノートを取っていた彼の姿は今も脳裏に焼き付いている。
そして手を繋ぐ、太ももを触る、の行為が定番化していた時、次は彼の手が私の太ももからするりとお尻に移動した。擽ったくて
身を捩ると彼は、じっとしていて、と小さな声で私に言った。彼の言う事を聞いた私は擽ったさに耐えつつ怪しまれないよう、先生の授業を聞いた。もちろん耳には一切入らなかったのだけど。
そうこうしている内に今度は彼の手が私のシャツを器用に捲り背中をゆるゆると撫で始めた。その妙な感触にまたしても私は身を捩りそうになってしまう。けれど先生にはバレたくないので、必死に取り繕った。
背中をゆるゆると撫でていたかと思うと次はスカートのウエスト部分に小さな手を突っ込み、彼は大胆にも私のパンツの中に手を入れ所謂生尻をクニクニと揉んだ。
なんとなくスケベな事の情報をぼんやりと知っていた私の心臓はあまりの出来事に破裂してしまうのではないかと思う程バクバクと大きく鳴っていた。今思うとあれは性的な興奮だったのだろうな、と思う。
結局彼からの行き過ぎたボディータッチは次の席替えが行われるその日まで続いた。
当時の彼がどうしてそんな事をしたのか、どこでそんな知識を手に入れたのかは分からないが、後にも先にもこれ程興奮する事はないのではないかと思ってしまう程の出来事だった。