よく
「医療・年金・介護制度維持のために、とにかく出生率を早急に2.07回復させろ、人口1億人維持を目指せ」
と識者が主張し、政治家が主張する。
「出生率を回復させれば、医療財政や年金財政や介護財政の崩壊を防げる」のロジックは、一見正しいように見える。
しかし、このロジック、長期的には成立するも、中期的には残念ながら成立しない。
医療年金介護が「ヤバイ」とされるのは、いわゆる団塊世代がリタイアして年金受給側に回り、
その後後期高齢者側に回って医療負担介護負担が増えてしまうから。
団塊世代のリタイアは2010~2015頃に始まり、年金介護の負担増は、団塊が後期高齢者になる2025頃から急増する。
で、仮に
「出生率が異常に高騰し、1.4程度だったのが3とか4とかに上がり、出生数も100万人⇒200万人300万人に急回復した」
そういう高出生社会に転換したとして、それが「2025年問題」の解決に役立つのか?
答えは残念ながら「No」である。
かりに、2015年から、異常に出生数が増えたとして、その人々が「社会福祉に貢献し始める」のは、早くても2033年以降。
(2033年になって、ようやっと、2015年生まれが18歳になる)
実際には2040年以降だろう。
だから、今更出生数を爆上げさせたところで、「2025年問題の解決には、全く手遅れ」である。
(2015年世代が社会に出る2040年頃には、既に団塊世代の殆どが鬼籍入りしている)
むしろ、もし2015年から出生数を爆上げさせたら、2025年社会は
「後期高齢者の医療介護と、年少世代の扶養を、ダブルで苦しむ社会」ということになり、社会負担が増大してしまう。
逆に言えば、団塊世代の年金・医療・介護負担をさせるために、「2000年前後の出生数を増やしておくべきだった」、
団塊ジュニアに30歳前で出産させるべきだったのであり、「もはや手遅れ」なのである。
もっとも、今から出生数を急回復させることに意味がない訳ではなく、
「団塊ジュニアが後期高齢者入りする2050頃」の福祉の担い手を増やしておく、という点においては、意味がある。
医療介護年金2025問題を解決するタイミングは実はあって、コロナウイルス感染症で死ななすぎた(割に少子化が一気に進行した)。