企業がなにか不祥事を起こし、謝罪文を会社のサイトに掲載するというのは、昨今珍しくないどころか、むしろ記者会見を開くより当たり前となっている。
その謝罪文で、単なるテキストではなく、画像で作った文章が使われる事例がある。
これを「検索エンジンに引っかからないようにするための姑息な手段」とする意見があるけれど、実際にはそれとは違う理由で、画像を使う事もある。というのも、今どき企業の不祥事など、新聞社のサイトにだって何年も残るし、その不祥事が炎上まっただ中ならGoogleで検索すれば、まず企業のサイトよりも、その不祥事を報じた記事の方が上に出てくる時代である。
不祥事を隠している段階ならともかく、公となり、謝罪文まで作った以上、企業側としては、むしろ謝罪文を検索エンジンのトップの表示したいほどである。企業がこの事件をどのように考えているのか、今後どのような対策を取るのかということは、マスコミというフィルターを通してよりも、ダイレクトに客に知らせたいというのが本音であるという企業は少なくない。企業の中には、わざわざテレビで「火災を起こす可能性があるので、○○という給湯器を探しています」というCMを流す事もあるのが、今どきの企業である。
では、どうして企業側は、検索エンジンに引っかかりづらい画像で謝罪文を載せるのか?
簡単に言うと、捏造対策。HTMLにただテキストを埋め込むだけだと、例えばFirebugなどを使って謝罪文をおちょくった文章に書き換えることが手軽にできる。それをスクリーンショットに取り、Twitterなどで公開して「ここの企業、こんな客をバカにすること言ってるぜ。なんて企業だ」と、さらなる炎上を狙うような人々に対する対策である。他の人から「元の謝罪文と違うじゃねーか」というツッコミが入っても、「さすがにやばいと思って差し替えたんだ。この企業は断りなく謝罪文を差し替えるような腐った企業なんだ」という反論すら予想される。それに対する対策である。
「いや、画像だって改ざんは可能だろ?」というのは、確かにその通り。しかし、画像での謝罪文だと、やはりテキストよりは改ざんは面倒だし、使用しているフォントも、よほど詳しい人じゃないと分からない。一部だけを書き換えると、フォントの違いが出てくるかもしれない。そういうのがあれば、企業側としては「ここのフォントが違う。これはこの人が改ざんしたんだ」という主張ができるようになる。全文を似たようなフォントで書き起こす、OCRソフトを使うという方法もあるだろうけど、さすがにそこまで手間をかける人は少ないだろうし、そこまで考えると謝罪文自体、ネットで公表できなくなるので、そこまでは考えない。
「PDFでも良いじゃん。そっちの方がGoogleとかにも引っかかるし」と言われれば、確かにその通り。それは企業の好みというか、単に普段からOfficeばかりで思いつかなかったとか、その程度の違い。
もちろん、「Googleにできるだけ引っかからないように」という目的で、画像にしてる企業もいるだろう。しかし、「改ざんしづらくする」という目的で、画像を使ってる企業もあるので、画像だからといって即叩くのはやめてほしいものだ。叩くのは、不祥事そのものと、その対応が十分かどうかで叩いて欲しい。