ある日、部長はFacebookをやれと僕に業務命令を出した。
他社とコラボレーションした新しいプロジェクトを動かすためという理由だ。
プロジェクトのメンバーとの連絡や意思の疎通がうまくいくし、他社とのコラボとFacebookの組み合わせを今後の成功のモデルケースにしたいとこの業務命令の趣旨が説明された。
ブラック企業を黒字会社と勘違いした上層部は、Facebookを打ち出の小槌のように考えているに違いない。
震災のあとに繊細チンピラになってmixiを卒業した僕にとって、新たにSNSに参加することは百害あって一利なしなのである。
半年ほどたったところで、部長からプロジェクトの停止が告げられた。
マーケティングに使う費用0円でプロジェクトをはじめなくてはならなくなったこととコラボ先がリスクを一切負わない契約を求めてきたからだ。
そんなゲームバランスの悪いクソゲーは勘弁して欲しい。クソゲーというよりむしろ無理ゲーだった。
結局、僕のもとには、使うあてのなくなった企画書と永遠に発表されることがないプレスリリースと疎遠になったコラボ先と目の前にいる部長がつながったFacebookのアカウントが残った。
社命でとったアカウントなので、キャバクラの女の子たちに教えるのも気がひけるし、これといった使い道がない。
部長も昼飯で食べたラーメンの記録にしかFacebookを使っていないようだった。
しばらくして、Facebook社からメールが届くようになった。
○○さんと△△さんがFacebook上で僕のことを検索したのか、友達探しのために会社のメーラーのアドレス帳をFacebookに献上してしまったのかはわからないが、検索された履歴をもとにしてお友達の捜索が毎日のように続いているようだった。
○○さんは、確かに聞き覚えのある名前だ。しかし、この○○さんの会社とは取引停止なのだ。
前の部長が辞めてしまったあとに前の部長のひいきだったこの会社ごとなかったことにされた。
△△さんも同じく前の部長つながりだ。個人的には縁深い間柄なんだけど、社命で取ったアカウントのつながりに会社の選択で切った人たちとの関係性が残るというのは都合が悪いと思うのだ。
どちらの人とも個人的には、仲良くありたいところなのだが、その人たちとつながることは、会社での僕の立場を悪くする要因になりかねないのだ。大変に申し訳ないと思う。
どこかで見たような文体だな