それなりにいい雰囲気になったりデートしてみたりの経験はあるようで
そしてその相手の男ってのもハタから話し聞く限りそんなに悪い相手じゃなく、
むしろ良い出会いじゃん!乗るしかないだろ!みたいな良い話のこともあった。
でも彼女らはそのたびに「なんかピンとこない」「好きだと思えない」
「ときめかない」「あの人とキスするのが想像できないからムリ」とかなんとか言って無碍にしている。
そんなこんなで彼女らはふたりとも、26年生きてきて交際の経験がない。
どうも彼女らの話を聞いていると、
恋愛とは双方が一目あった瞬間から、心がピンときてキュンときて、股間がビンときてジュンとくるような
熱い運命のマッチングなしには始まらないものと思っているらしい。
どちらかが言い寄って、言い寄られたほうはさほどギュンと来ないけどとりあえず承諾してみて
そのうち段々双方ベタぼれになっていって、結果的にキスや性行為もありうる、といったような
いまどき少女漫画でもなかなかないような、「この人以外ありえない」みたいな恋がしたいそうだ。
彼女たちは、別に超めんくいってわけでもないので、男の理想自体は高くないのだ。
けれど、「恋愛に対する理想」がバカ高いせいで、恋愛に至ることができない。
きっとこういうことを書くと、
「恋愛したくないけどそう言ったらリア充から人非人扱いを受けるから、彼氏欲しいふりをしている人もいる」
と指摘する人もいるだろうが、彼女らふたりに限って言えばそれは当てはまらないと思う。
出会いがほしいといって街コンや合コンに参加し能動的に出会いを得ている。
そのわりには毎回「合コンでの出会いってなんか即物的でイヤ」とか言ってごねて結局無碍にしていて
人柄がよく顔も悪くないオススメの友人を紹介したことも何度かある。
でもやっぱり、ピンときていただけなかった。
また、理想が堅すぎるのは身持ちが堅すぎるのの裏返し…というわけでもない。
ピンとくるとか運命とかいうこだわりは一切関係なく安心して身を委ねられたらしい。
「そのまま彼女になっちゃえばいいんじゃないの?むりなの?」と聞いても
「彼氏にしたいかというとよくわかんないんだよなぁ」とか言って煮え切らない。
もはや支離滅裂なのである。
たぶん、そこそこの容姿の女性であれば、男に惚れられて言い寄られる回数もぶさいくよりは多いので
いつかピンとくる男が出てくるのを待つという戦法も、運が良ければうまくいくかもしれない。
だがぶさいくがそれをやるとなかなか哀れなものがある。
深い深い海の底で、かすかな明かりを灯して獲物を待つ醜いアンコウに
やっとのこと、小さな深海魚が近づいてくるが
アンコウは「あんまりおいしそうだと思えない」「お腹へってるけどこれが食べたいわけじゃない」とかなんとか言って見送る。
そんなことを考えてしまう。