2020-04-11

[] #84-11幸せ世界

≪ 前

「フラッガー?」

宇宙規模で有名な指名手配犯さ。SSS+級のね」

そいつは激レアだな」

そのフラッガーとやらは様々な世界を行き来して、幾度も次元を分裂させているらしい。

次元を分裂させる犯罪者は他にもいるが、フラッガーはその元祖なんだとか。

フィクションとかで、特定因果律を“フラグ”っていうのは聞いたことあるだろ?」

「ああ、“死亡フラグ”とかってよく言われてるな」

「あれは架空概念じゃないんだよ。実在していることが分かったんだ」

「……驚くべきことなんだろうが、正直ちょっと反応に困る」

遥か未来では次元を行き来できるようになり、その過程で“フラグ”という概念発明された。

そのフラグを使うことで、次元に大きく干渉することが可能になったらしい。

しかし、フラグ情報技術未来でも閉じられている。

不特定多数が無闇に使えば、次元に悪影響を及ぼすからだ。

今回の分裂現象が、その最たる実例だろう。

「つまり、そのフラッガーって奴は独学でフラグ発見して、自在干渉する方法を見つけたと」

「というより、フラグ最初に見つけたのがフラッガーなんだよ。発明したのもね」

フラッガーは元の世界では、かなり著名なエンジニアだったらしい。

特に次元の行き来については、宇宙全体を見回してもトップクラスなんだとか。

「だから今まで捕まえることはおろか、足取りを掴むことすら困難だったんだ。けれど、今そのチャンスを“ボクたち”は与えられた!」

“ボクたち”っていうのが、すごく引っかかる。

このままフラッガー探しに突入しそうな勢いだ。

「もう、ここにはいないんだろう? 今さらいかけて捕まえるのは無理じゃないか?」

世界が分裂を始めた時、ボクはあらかじめ世界全体に防護バリアを張っておいたんだ。分裂した世界が、すぐに消滅してしまわないようにね」

防護バリアは内外問わずちょっとそっとのことでは破れないようになっているらしい。

そしてバリア世界が分裂した直前、つまりフラッガーが犯行に及んでいる最中に張られた。

ということは、まだフラッガーはこの世界のどこかにいるってことだ。

「フラッガーがまだいるのは分かったが、この世界宇宙より狭いってだけで、俺からすれば十分広いんだぞ」

「もちろんアテはある。さっきも言ったように、分裂世界では次元不安定から生身での行き来は出来ない。だからフラッガーも専用の船を持っているはずなんだ」

その船とやらは、持っている探査機を使えば、間もなく見つかるものだという。

ガイドは善は急げとばかりに探査機を起動した。

「じゃあ俺はこれで……」

いよいよマズい展開になってきたな。

嫌な予感を察知し、俺はにべもなく船から下りようとする。

「悪いけど、もう少しだけ力を貸してくれ」

扉に手をかけるが、うんともすんともいわない。

ガイドによってシステムロックされているようだ。

「俺の出る幕じゃないだろ」

「フラッガーは次元移動のスペシャリストだ。追い詰められた時、どんな奥の手を使ってくるか分からない。万全を期すなら、次元の影響を受けにくいキミがいるんだ」

その万全を期したとき、俺の身の安全は誰が期してくれるんだよ。

抗議も空しく、船はゆっくりと移動を始めた。

次 ≫
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  • ≪ 前 ・ ・・ ・・・ ・・・・ 「ほら! 起きて! しっかり!」 朧げだが、既視感のある声が聴こえる。 俺はゆっくりと瞼を開いた。 「あ、やっと起きた。あの後キミはぐったり...

    • ≪ 前 「なんで俺が?」 「キミじゃなきゃ次元に直接干渉できないからだよ。厳密には“普遍的存在”じゃなきゃ、だけど」 さも当然のように、また固有名詞を出してきた。 いや確...

      • ≪ 前 レーダーを頼りに信者達の目を掻い潜り、俺たちは慎重に歩を進めていく。 不幸中の幸いというべきか、道中は信者たちの手が及んでいない場所が多く、労せず次元の歪みに辿り...

        • ≪ 前 信者たちは難なく撒くことができた。 彼らのダボダボな白装束は、人を追いかけるのには適していないからな。 こういう時ですら、なりふり構う必要があるんだから信者は大変...

          • ≪ 前 もしかしたら、この世界では普通のことなのだろうか。 価値観が矯正されているから、彼らにとっては問題ではないのかもしれない。 集金が阿漕だとしても、それが“救い”へ...

            • ≪ 前 生活教は“生活をより良くする”という教義のもと、日々ライフハック的なことを広めている。 この辺りを中心に活動しており、地域新聞に載る程度には有名な新興宗教だ。 し...

              • ≪ 前 その地に足を踏み入れた瞬間、すぐに異様な空気感が襲った。 場所は先ほどいた庭と同じ。 目に映る景色も代わり映えしない。 だが「何かが違う」という感覚。 リメイク、リ...

                • ≪ 前 「さっきの続きだが、“本来なら存在しなかった世界”って何だ?」 「分岐によって自然発生的に生まれた世界ではなく、次元の過干渉により発生した世界。システムの不具合、...

                  • ≪ 前 ガイドと初めて出会ったのもエイプリルフールだった。 恐らく、こいつの時代にはそういう文化がなく、たまたま巡り合わせが悪かっただけなんだろう。 「これがこうなって、...

                    • 幸せって何だろう。 ……なんてことをシラフで管まく奴がいたら、それは人の温もりに飢えているドランカーか、時間を持て余したバックパッカーのどちらかだ。 それ以外だと、弟み...

                    • ねえ みんな面白くないとか、延々とスパムみたいなつまらないことやめて欲しいって言ってるよ そんなに強情にならないでいい加減やめたほうがいいよ ここらが引き際としていいタイ...

                  • いい加減諦めなよ 本当につまらないんだよ 何回も言われてるんだからさ 意固地にならずにここは清々しくやめようよ みんなそう思ってるよ だからやめようよ

        • 何度も言うけどさ 本当につまらないんだよ だからさ もういい加減やめたほうがいいって どうしてそんなに頑固になるの こうやって言ってることを素直に受け止めて

      • ごめん やっぱり面白くないよ 本当に何度もいうんだけれどさ 才能もないし諦めたほうがいい もう投稿しないほうがいいよ

  • ≪ 前 「なあ、今すぐじゃないとダメなのか? また次回にでも……」 「頼むよ。こんなチャンス、二度とこないかもしれない」 ガイドたちは、今までフラッガーの犯行に悪戦苦闘し...

    • ≪ 前 俺たちはフラッガーを拘束して、次元警察に引き渡すまで船で待機することになった。 「ふふふ……己(おれ)も年貢の納め時が来たというわけか」 信者達が俺たちを捕まえよ...

      • ちゃんとトラバ読んでる? つまらないからもうあきらめようよって 何回も書き込んでいるよう 誰も求めていないことだし 本当にもうやめようよ

      • ≪ 前 「これは使命だと思った。全ての人間、いや森羅万象を幸福にせよという己(おれ)の使命だと」 彼はそのフラグで、悪魔的なヒラメキを得たのである。 それが世界を分裂させ...

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