「事後報告は嫌、何をしているか逐一報告して」「平日は必ず電話して」「朝は私よりも早く起きておはようって言って」「仕事に行く時間にはいってらっしゃいって言って」「おはようといってらっしゃい言うまで二度寝しないで」「休日は必ず一緒に過ごして」「仕事以外の時間は私のことにあてて」「他の女性と連絡を取らないで」「外に出る時は指輪つけて」「私だけを見て」「私を一番に考えて」
彼女の要求は、世間でよく聞くようなものばかりだ。要求を満たさなかった場合には、嵐がやってくる。
僕が体調を崩したため「ごめん、今日は休ませてもらうね」と会えなかった休日の夜には「つまらない1日だった。こんな日過ごすなら死んだ方がまし」といったメッセージが来たり、平日の夜に僕が疲れて早くに寝てしまった時には「あなたは私の声が聞きたくないんだ、そっかそっか。疲れてるのか知らないけど、私は疲れてても起きてられるのに。私の事どうでもいいから寝れるんだろうね。一生寝てろよ」といったメッセージが来たりする。これらはほんの一例で、まだやさしい。言葉だけを見ると本当にキツいものを浴びていると感じている。
多くの人が身を引くだろう状況にあってもなお僕が彼女と交際を続けるのは、僕が彼女のことを愛しているからというのはもちろんのこと、彼女がそうしたくて数々の要求や嵐をもたらしているのではないと気付いているからだ。人の考え方や発言・行動は全て幼い頃(少なくとも自分で感情を処理できない頃)の養育環境に由来しており、意識的に過去の事実や感情と折り合いをつけない限り、人は過去の養育環境に縛られる生き物である、というのが僕の考え方である。彼女の言動や行動も、彼女の過去がそうさせているのだと感じている。現に、彼女は機能不全家庭で育っていて、彼女の感情の表し方はこれまでに彼女から聞いた彼女の母親のそれと非常に似ている。
彼女と交際を始めてから、僕は気付かれないようにたくさんの心理学や社会学・教育学に関する書籍を読み進めた。これまでの背景を知るために、遠回りに質問するなどもした。さまざまな点で確信を得た。それから、今後どのように僕は接していくべきか、彼女にとっての課題は何かということを考えた。
しかし、ここにきて葛藤が生じた。振り返ると、僕は僕との関係について彼女がどう思っているかということを訊いたことがなかった。もし、彼女が自分自身の言動に疑問を感じていなかったら、現状のままで良いと感じているのなら、彼女が彼女自身の課題に気付くように僕が行動することは、結局のところ僕のエゴでしかない。僕は迷惑を被らないために彼女を都合良くコントロールしようとしているのではないか。単なる僕の主観で、彼女の今の状況が良くないと判断しているではないか。彼女が変化を望まない限り、それらは全て押し付けでしかなく、エゴなのだ。いつか彼女が疑問を抱き、今の関係を改善したいと言ってきたときには、全面的にサポートしたい。だけどそうでない限りは、僕は今のまま勉強を続け、今のまま彼女との関係に身を委ねようと思う。
彼女は、今後も急降下または急上昇する僕への評価を強い言葉に換えて僕に浴びせるだろう。だけど、今となっては僕は僕が彼女にどう扱われたっていいと思ってる。全てを受け止めたい。言葉に秘められた感情に気付きたい。どんな行動も言動も全て愛情との葛藤として抱きしめてやる。最終的にわかってくれれば、とか能天気なことは思わない。変わってくれとも思わない。ただ、彼女に幸せになってほしい。それが僕の手によってでなくてもいい。彼女が満ちた気持ちで日々を過ごせること、それが僕の望むことだ。受け止められなくなったら、それは単に僕の力不足だったんだと思って潔く身を引こう。ただ今は、僕の手で大きな愛で彼女を包みたい。痛々しいほどに、僕は彼女の事を愛してるんだよ。
共感をもって読んだ。 「彼女の変化を望むのはエゴではないか」という疑問も正当なものだと思う。彼女の生まれ育った家庭環境についても、基本的には触れない方がいいだろう。分析...